KPMGコンサルティングは、企業のコーポレート部門が全社的な価値を創出するうえで果たすべき役割や取り組むべき課題について解説したレポート「Future of Corporate Services コーポレート部門の可能性を引き出せているか」(日本語版)を発表した。
コーポレート部門における現状
コーポレート部門の効率性向上を阻害する要因の1つとして、各部門が独自の目標や業務慣行、データ、システムに沿って業務を進める傾向があることが挙げられるという。相当数のフロントオフィスとミドルオフィス(40%)に加えて、コーポレート部門(42%)の回答者が、組織のコーポレート部門の機能はサイロ化されていると認識していた。
組織内のサイロ化による問題を解消するうえで、主な妨げとなっている要因は、「コーポレート部門の責任者とそれ以外の部門を担当する上級管理職との、サービス提供に関する改善方針の見解の相違」「人材や新しいスキルの軽視」「変化の激しい市場におけるビジネスニーズへの不十分な対応」の3つだとしている。
コーポレート部門における4つの重点取り組み事項
コーポレート部門は、全社的な価値を創出していくうえで、より大きな役割を果たすことが求められている。そのためには、調達・購買、人事、財務・経理、情報技術、法務などの各部門がより緊密に連携し、企業価値の創出および毀損防止、予防的な観点でのリスクの軽減を推し進めていく必要があるという。
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①企業価値に焦点を当て、価値創出を推進するコーポレート部門を設計する
企業として繁栄を続ける(あるいは存続する)には、自社の価値創出を継続的に評価することが必要だと同社は述べる。新たな価値の源泉に合わせて、素早く変化できる企業が未来の勝者になるという。ただし、これを実現するには、価値創出の推進と価値の喪失を阻止できる俊敏性を持ったコーポレート部門が必要だとしている。
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主要なアクション
- ビジネスモデルと運用モデルの重点を企業価値創出に置く
- コーポレート部門が連携できる優先度の高いバリューストリーム(製品やサービスの開発と消費者への提供、その後のアフターサービスも含めた企業が付加価値を生み出す一連の活動)を特定する
- 現状のコーポレート部門の業務モデルの成熟度を評価する
- コーポレート部門の方針とビジネス戦略との整合性を維持し、価値を確保する
- 目標と主要な結果(OKR)およびガバナンスを通じて、組織間の連携を推進する
②データの力を活用し、ビジネスにさらなる価値をもたらす
コーポレート部門は、企業データの管理者としての役割を担う。これらの機能を効果的に連携・統合するためには、迅速な流れでスムーズにアクセスできる共通データが重要だという。現代の戦略的な意思決定には、組織全体のデータベースを基盤とした効率的なプロセスが必要であるとしている。これにより、正確かつ最新の情報を得て生産性を高め、コストを削減し、顧客や競合・リスクや機会に関する新たな洞察を得られるという。
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主要なアクション
- 設計の重点をデータ提供に置くことでビジネスをサポートする
- 部門横断的なエンタープライズ機能を構築する(データ、テクノロジー、プロセス)
- 将来像の実現を可能にするエコシステムを評価し開発する
③生成AIを導入し、労働力を含めてコーポレート部門を抜本的に変革する
高度なAI、特に生成AIがコーポレート部門の抜本的な変革を促し、さまざまな作業やプロセスの担い手がヒトからAIに置き換わっている。ただし、AIの潜在能力は、ヒトの専門知識と創造性が加わって初めて発揮されるものになるという。リーダーにはAIへの信頼を維持するとともに、期待されるメリットを高めるために、いかにしてAIとヒトの能力のバランスを取るべきかを考慮することが求められるとしている。
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主要なアクション
- 生成AIの導入先について評価し、必要に応じてプロセスを一から再構築する
- 従業員の役割を再設計する
- エコシステムパートナーの活用で生成AIの目標を推進する
④コーポレート部門の発展に向けて、変革を促し実現する
Cレベルの経営層は、コーポレート部門を相互に、またその他の部門ともより緊密に連携させたいと考えているという。コーポレート部門によっては、構造や業務手法の固定化やサイロ化といった形で、こうした変革を阻む要因が存在しているとのことだ。
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主要なアクション
- 部門リーダーを動かし、変革を推進し支援する
- 変革を通じて従業員をリードする
- 人材を変革の中心に位置付ける
コーポレート部門の潜在的な可能性を引き出すためのステップ
コーポレート部門が組織のバリューストリームに注力し、組織全体と連携し、データを調和させ、新しい技術を統合するにつれて、その能力を再考する必要があるという。コーポレート部門の潜在的な可能性を引き出すためのステップは以下のとおり。
- スキルを継続的にチェックしアップグレードする
- 「ヒト」のスキルを重視する
- 俊敏で好奇心あふれるマインドセットを奨励する
- 変化に伴う不安に対処する
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