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ソニー発「REON POCKET」はなぜ生まれた? 大企業で新規事業を開発するメリットとデメリット

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ヨーロッパに勝機を見出す

──スピンオフのメリットを教えてください。

 機動力を発揮しやすい点です。本社の一事業として進めると資本の渦に巻き込まれますし、ステークホルダーも増えます。外部のステークホルダーやパートナーは事業を拡大するにあたって重要です。しかし、内部のステークホルダーが多すぎると我々だけに目を向けてもらうことが難しくなり、事業推進のスピードが落ちてしまいます。

──事業を子会社化するための制度は社内にありましたか?

 制度らしい制度はありませんでした。そのため「3年後には子会社化して、さらにスケールしていきます」と関係各所でことあるごとに言い続けたんです。私があまりにしつこいため周囲はうんざりしていたと思いますが、言い続けたことで意思が伝わり「あとは数字を持っていくだけ」という状態をつくれました。とはいえ、子会社化までに相当な時間を要したのは事実です。

──事業の展望をお聞かせください。

 暑さは世界共通の悩みです。今後はグローバル展開に力を入れて、世界中の方々にREON POCKETを使っていただきたいと考えています。特に私が期待を寄せている地域はヨーロッパです。ヨーロッパには伝統的な建造物が多く、エアコンの後付けができないところも多いと聞きます。美しい町並みを保全しつつ、我々のプロダクトで暑さ対策に貢献したいです。

 個人向けのREON POCKETだけでなく、法人向けの「REON BIZ」も強化したいです。暑さ対策と省エネの二本柱で価値を提供していきます。法人が使う電力は莫大ですから、オフィスや倉庫の温度を快適に維持しながら電力の削減に貢献できるはずです。

より多くのエース人材を新規事業開発に

──最後に、読者に向けたメッセージをお願いします。

 既存事業に10年携わったエース級の従業員が、新規事業にどんどん流れてきてほしいです。通常、エース人材は所属事業部に囲われています。私はこれを非常にもったいないと感じていて。新規事業に関わる一つひとつの業務は、既存事業に比べるとそれほど大変ではありません。なぜなら因数が極めて少ないからです。事業規模が拡大するにつれ因数が増えて大変になりますが、だからこそ大量の因数を処理できるエース人材が必要だと感じます。

──エース人材を新規事業に呼ぶためにはどうすれば良いと思いますか?

 インセンティブは一つの手段ではないでしょうか。お金の問題が全てとは言いませんが、メジャーリーガーが待遇の良いチームに移籍するのと同じです。新規事業より既存事業のほうが先を読めますし、安定感もあります。そのうえ報酬が変わらない、ましてや下がるのであれば、たとえ裁量が増えてもチャレンジするモチベーションが上がりにくいのは当然だと思います。仮にエース人材を引き抜いたとしても、引き抜かれた当人が新規事業に関心を持てなければ元も子もありません。なかなか難しい話ではありますが、エースには積極的にチャレンジしてもらいたいですし、企業側には仕組みづくりを頑張ってもらいたいです。

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この記事の著者

渡辺 佳奈(ワタナベ カナ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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