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組織戦略としてのデザイン

パナソニックのデザイン組織が海外機能の強化にこだわる理由 内部と外部の混合チームと一次情報での差別化

【後編】パナソニック株式会社 デザイン本部 戦略統括室/Panasonic Design London ディレクター 池田武央氏

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生成AI時代の成功の鍵は「一次情報」と「対面力」

栗原:昨今、生成AIが急速に普及するなかで、情報のコモディティ化が進んでいますよね。そうしたなかでは、対面コミュニケーションで魅力を発揮できる人材の価値は高いように思います。

池田:そう思います。情報そのものの価値は薄れて、「誰が話したか」などによる説得力へ価値が移っていく時代なのかなと。

 では、どうすれば説得力が持てるのかと言えば、一次情報を有しているかどうかだと思うんです。たとえば、ある有識者の理論を書籍やメディアで知っているだけの人と、その有識者と直接対面で話したことのある人では、同じ内容でも後者のほうが説得力ありますよね。展示会にしても、コミュニティ活動にしても、情報として知っているのと実際にそれを体験した人では、聞く側の納得感が違います。

 おそらく生成AI時代には、こうした一次情報の有無が差を生むように思います。我々ロンドン拠点のデザイン組織では、日本の技術部門のメンバーをロンドンに招いて欧州の専門家と直接対話をする機会を提供し、対象テーマの最新事例を体験できる機会も多く作っています。この取り組みの目的も、一次情報と直接向き合う重要性を感じてもらうことでした。

栗原:テクノロジーが進化した結果、対面でのコミュニケーションの価値が高まるのは、やや皮肉にも思えます。

池田:しかし、この流れは止まらないと思います。コモディティ化した素材で独自性を生み出すのは不可能ですから。だからこそ、日本企業には海外での対話や実体験といった一次情報を収集できる体制づくりにも向き合ってほしいと思っています。繰り返しますが、それを今ある社内リソースだけでやる必要はありません。

今後のデザイン組織に求められる「英語圏での現場力」

栗原:一次情報の収集を組織的に行うために必要なことは何でしょうか。

池田:「英語圏での現場力」です。日本において日本語のみで収集できる一次情報や一次体験が限られている以上、文化背景や商習慣の違う人たちと現地で英語を使って切磋琢磨しなければいけません。新しい視点や価値観を得ると同時に、自分の考えや自社の意図を正しく伝えて、共創する仲間を増やしていく姿勢は、今後ますます求められるでしょう。

 たとえば、日本国内で高いインサイトリサーチができる人材がいたとしても、言語や文化背景の異なる海外で同じパフォーマンスを発揮できるとは限りません。国内でのパフォーマンスを100%とすると、北米やインドでは10%ほどしか発揮できないこともありえます。

 そのため、今後は海外でも限りなく100%に近いパフォーマンスを発揮できるデザイナーを増やしていくのが目標です。様々な形で惜しみなくサポートしていきたいなと。そうした人材がまず5人、10人と輩出されていけば、パナソニックの海外機能が格段に高まると同時に、今よりもさらに経営戦略に寄り添った体制をつくれますし、広くは日本全体を強くするデザイン産業の財産になります。

栗原:今後、注力したい活動をお聞かせいただけますか。

池田:「海外」と一括りに話してきましたが、インハウス組織としては、大きな経営戦略の動きと合致した貢献をできるかが非常に重要です。

 たとえば、今後パナソニックではインド市場を最重点地域としてBtoBの電材商品の販売からソリューションまで海外展開拡大を図っていきますが、正直なところこれまでは私自身、まったく向き合うことができませんでした。広義のデザインプロセスにおいても、最も貢献ができるテーマを検討しながら今期中に欧米での活動に加え、日本のメンバーと一緒にインドでの経営貢献にもチャレンジしていきたいと思っています。

 今回の取材のなかで、国内のデザイン組織に「気づく・考える・つくる・伝える」というデザインのプロセスを普及・浸透させていくお話をさせていただきました。デザインとは、事物を「つくる」だけではなく、その前工程である「気づく」や「考える」、つくったあとの「伝える」もプロセスに含まれます。広義のデザインを経営貢献するレベルまで拡張するには、このデザインプロセスに対する理解が必須です。今後は、国内で実施した広義のデザインを定着させる施策を、海外へも展開していきたいと思っています。

パナソニックのデザイン組織の「広義のデザイン」の定義
再掲:パナソニックのデザイン組織の「広義のデザイン」の定義/クリックすると拡大します

栗原:本日はありがとうございました。

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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