配管エンジニアからDXリーダーへ
──まずは瀬尾さんのご経歴を教えてください。
配管エンジニアとして東洋エンジニアリングに入社し、耐震設計のスペシャリストとしてキャリアをスタートしました。入社3年目の頃、日本の耐震設計技術をイランの石油会社へ輸出するプロジェクトにアサインされ、単身でイランに渡った経験があります。
イランでは、国営の石油会社に勤めるエリートたちを相手に耐震設計のレクチャーをしたり、海外のコントラクターが建設したプラントの耐震評価をしたり。タフな仕事でしたが、この経験で度胸がつきました。
その後はオイルメジャーの案件を中心に解析業務を担当していたのですが、入社12年目を迎えた年に、東洋エンジニアリング史上最大規模のプロジェクトで、PEM(プロジェクトエンジニアリングマネージャー)を任されました。海外に5、6年赴任して、プラントの立ち上げフェーズまで漕ぎつけた折に本社から声がかかり、DXoT(DX of TOYO)推進部の立ち上げにともなって部長に就任しました。「DXはミドル層が引っ張るべき」という上層部の意向から人事が決まったのです。
DXリーダーとして約6年間活動したのち、2025年6月より東洋エンジニアリングのグループ会社であるテックプロジェクトサービス(以下、TPS)の社長を務めています。
──次に、TPSの簡単な企業・事業紹介をお願いします。
TPSは、東洋エンジニアリングが展開していた医薬ファイン事業を分社化して誕生した会社です。現在は医薬ファイン事業に加え、プラント事業、保全事業、環境事業を運営しています。
データ統合基盤を約3年で構築
──東洋エンジニアリング時代、DXoT推進部長としてどのようなことに取り組まれましたか?
プラント事業全体のデジタル基盤を構築しました。プラント事業では「Engineering(設計)」「Procurement(調達)」「Construction(建設)」の三つの工程を一括で請け負いますが、それぞれに異なる高度な専門性が求められます。つまり、全行程を一つのシステムでカバーするのではなく、業務特性に合った最適なシステムを部門ごとに用意する必要があるのです。
たとえば、配管設計業務に適したシステムの要件を定義して開発・導入するとしましょう。その要領で各業務に特化したシステムをつくり続けると、社内にシステムが乱立してしまうため、それらをまとめるハブが必要です。ひと昔前ですと、巨大な基幹システムを構築して各部門に乗り合ってもらう形が一般的でしたが、それではなかなか業務に特化できません。
そこで、システムそれ自体は各部門の業務に適したものを開発・導入しつつ、各システムのデータを集約するデータ統合基盤を構築したのです。システムごとにタスクを立ち上げ、業務分析からビジネスプロセスの再設計、システム開発まで2、3年で一気に進めた結果、私がDXoT推進部長に就任した2019年当時は限定的だったシステムも、現在では37にまで増えました。
