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AI経営の成否を分けるリーダーの条件 「CAIO実態調査2025」が示す3つの最適解とは

PwC Japanグループ「CAIO実態調査 2025」レポート

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 AIが企業の競争優位性を決定づける「ゲームチェンジャー」となるなか、その戦略と実行を一手に担う最高AI責任者(CAIO:Chief AI Officer)への期待が高まっている。しかし、その役割や成功パターンは企業によって異なり、いまだその「最適なCAIO像」は模索段階にあると言えるだろう。PwC Japanグループは、この新しい経営幹部職の定義と実態を明らかにするため、「CAIO実態調査2025」を実施した。本レポートでは、同グループのチーフ・AI・オフィサー兼データ&AIリーダー 藤川琢哉氏と、PwCコンサルティング合同会社マネージャー 塩原翔太氏 が登壇したメディアセミナーの内容に基づき、日本企業におけるCAIOの設置状況、成果創出の傾向、そしてAI時代に求められるリーダーの条件を深く掘り下げて解説する。

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CAIOの定義と経営戦略における位置づけ

 PwC Japanグループで自らCAIOを務める藤川琢哉氏は、まずAIが経営の最重要アジェンダとなった背景から語り始めた。AIの進化は社会全体に大きなインパクトを与えており、全ての企業にとって必須の経営アジェンダとなっている。特に生成AIの登場により、企業は従来のITの一手段としてではなく、ビジネスモデルそのものをAIによって考え直す必要に迫られている。

 PwC JapanグループはCAIOを、「AI戦略の立案から実行までを統治し、責任あるAIによる変革を主導する経営幹部」と定義している。その役割は、社内外のステークホルダーとの連携を通じて、事業価値創出(攻め)とリスク管理(守り)の両立を担う点に重きが置かれている。藤川氏は、このCAIOへの期待や役割が抽象的である現状を踏まえ、「AI経営の成否を分けるCAIOの条件とは何か」という問いに着目した本調査の意義を強調した。

6割の企業が設置済み:AI活用推進度の「二極化」

 調査を担当した塩原翔太氏は、まず調査概要を説明した。調査対象は日本国内の売上高500億円以上で、AI導入に何らか関与がある課長職以上1,024名である。

PwC Japanグループ「CAIO実態調査 2025」
図版出所:PwC Japanグループ「CAIO実態調査 2025」/クリックすると拡大します

 CAIOの設置状況について、正式なCAIOを設置している企業は22%、CAIOという名称ではないが同等の役割を持つ責任者を設置している企業を含めると60%に達するという。この結果は、AI活用姿勢の二極化が進行しており、AI活用を経営戦略として積極的に推進したい企業の多くで責任者の設置が完了したことを示唆している。

 さらに、CAIOを設置している企業(60%)と非設置企業(40%)のAI活用推進度を比較すると、業務領域、技術領域、管理領域の全領域において、CAIO設置企業の方がAI活用推進度は20ポイント以上高いという結果が得られた。塩原氏は、AI戦略実現に向けてCAIOの設置が不可欠であり、CAIOが業務・技術・管理を網羅的に関与しリードできる体制が重要であると指摘した。

成果領域とCAIOの属性:成否の鍵は登用方法と専門性

 CAIOが既に挙げている成果と、そのCAIOの専門性(業務、技術、管理)および登用方法(社内、社外)を比較した調査からは、成果創出の領域に明確な特徴が見られた。

PwC Japanグループ「CAIO実態調査 2025」
図版出所:PwC Japanグループ「CAIO実態調査 2025」/クリックすると拡大します

 具体的には、コスト削減では、既存業務をよく知る「業務領域」の社内登用が53%で最多となり、既存のコスト構造への深い理解を持つ人材の有効性が裏付けられた。

 また、新規収益源創出も、既存ビジネスを理解した上での創出が求められるため、「業務領域」の社内登用が46%で最も成果を上げている。一方、顧客体験向上では、既存の考え方に縛られない新しい体験創出が必要とされるため、社外登用の方々が上位を占める傾向が見られた。

 特にAIガバナンスは、既存のガバナンスとの関連性から「技術領域」の社内登用が39%でトップであり、AI活用推進における「ガードレール」としてのAIガバナンスの整備は、堅実なAI活用を加速させるために不可欠である。

 この結果から、全社戦略をもとに重要視したい成果を選定し、その成果創出を目指す領域との親和性が高い特性のCAIOを登用することが望ましいという示唆が導かれる。

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CAIOの理想と現実のギャップ、必要なスキルと連携組織

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Biz/Zine編集部(ビズジンヘンシュウブ)

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