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東洋エンジニアリングのDXリーダーがグループ会社TPSの新社長に プラント企業の変革は続く

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2016年のDXがうまくいかなかった理由

──基盤を整えた後の話も教えてください。

 最適化シミュレーターを開発しました。プラント事業のプロジェクトを進める際、従来はガントチャートで何千行にも亘るスケジュールを組んでいたんです。作成には手間と時間がかかる上、高い専門性を要します。

 そこで「EffiMate(エフィメイト)」というツールを開発しました。数理最適化モデルを用いて数万通りのスケジュールを自動で立ててくれる上、「コストを最も抑えられるスケジュール」「リソースを最少化できるスケジュール」「リスクを最も低減できるスケジュール」など、様々なオプションを提示してくれます。

 プロジェクト成功させるためには、立てた計画と実際の進行の差分を可視化する予実管理が不可欠です。これまでは各人がExcelを用いてその日の進捗を管理していました。上長はメンバーから共有されるExcelを見て、また別のExcelで“実”のデータを蓄積するため、一元管理ができていなかったのです。これではタイムラグやミスが生じてしまいます。

 そこで、スケジュール管理システムを新たに開発・導入しました。皆がクラウド上の同じ画面にデータを入力すれば、“実”を簡単に把握できます。

 前半にお話ししたデータ統合基盤には、EffiMateから“予”のスケジュールが、スケジュール管理システムから“実”のデータが集まってきます。その二つを突合して、遅れが発生している/発生し得る工程をリアルタイムに可視化するダッシュボードも構築しました。

──DXで苦労した点はありましたか?

 DXoT推進部が立ち上がったのは2019年ですが、DXの取り組み自体は2016年から存在していたんです。ただ、うまくいってはいませんでした。当時はIT部門が主導していましたが、現場の業務や課題に対する理解が十分でなかったため、システムが現場の業務や実態に即したDXになっていなかったのです。

意思決定のスピードは段違いに加速

──DXoT推進部が主導したDXはうまく運びましたか?

 DXoT推進部のメンバーは業務に精通していますから、今度はうまくいく自信があったのですが、やはりそれでも「作る人」と「使う人」で分かれてしまって。各部門から代表者を出してもらっても、開発したものを自身の部門に持ち帰るとなかなか受け入れてもらえない。この壁が非常に高かったです。使ってくれる人ももちろんいますが、既存のやり方と並行した運用のため、我々が期待していたほどのインパクトで変革は進みませんでした。

──東洋エンジニアリングのDXoT推進部長からTPSの社長へ転身した背景を教えてください。

 東洋エンジニアリングの社長から「自分で作った仕組みを使う側のトップとして成果を出してこい」と背中を押されました。DXはつくって終わりではありません。実際の事業現場で使われてこそ価値が生まれます。プロフィットの責任を負う意味で、先ほどご紹介したデータ統合基盤やEffiMate、ダッシュボードなどの浸透を行っています。

──同じ東洋エンジニアリンググループとは言え、両社では企業の規模や文化が異なると思います。TPSならではの特徴はありますか?

 企業規模がコンパクトになった分、意思決定のスピードは段違いに速くなりました。東洋エンジニアリングのような、従業員数7,000名規模のグローバル企業でトランスフォーメーションを実施するとなると、動きはどうしても遅くなってしまいます。テックプロジェクトサービスの従業員数は約250名ですから、ツールの導入からトランスフォーメーションまでクイックに進んでいる手応えがあります。

 実際、私が社長に就任してから1ヵ月以内に大規模なプロジェクトでスケジュール統合ツールの導入が完了しました。ほかにも、今までは担当者がメールでナラティブに発信していたプロジェクトの週報を、ダッシュボードで把握できるように仕組みを整えています。

──逆に、東洋エンジニアリングならではの良さがあればお聞かせください。

 やはり財務体力でしょうか。システムをクラウドネイティブに構築するとなると、多額の初期投資が必要です。何十億円もの投資をする体力はTPSにありませんから、親会社の手を借りながら、最適な形でDXを進めています。東洋エンジニアリングが投資をして、TPSがその投資を実装・運用の面でリードする。そのような好循環をつくりたいです。

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DXリーダーに求められる三つの「〇〇力」

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この記事の著者

渡辺 佳奈(Biz/Zine編集部)(ワタナベ カナ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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