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イノベーション迷子に贈るグラフィックガイド

イノベーションの火を絶やさないために。疲れて止まった「自律自走人材」が再び走り出す方法

第4回

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 本連載では第1回から第3回にかけて、大企業がオープンイノベーションに取り組む理由、新規事業プロジェクトの推進、そしてメンバー一人ひとりが組織を動かすために何ができるか、というテーマを扱ってきました。企業の持続的成長にイノベーションが不可欠であるという主張はもはや目新しいものではなく、実際に多くの企業がその重要性を提唱し、推進しようと試みています。しかし、現場で新しい仕組みや事業、あるいは組織風土の変革といった活動を実践するのは、決して容易ではありません。最終回となる今回は、そんな一筋縄ではいかない役割を担う「イノベーション人材」とはどのような存在なのか、そして彼ら・彼女らが目指す先には何があるのか、具体的な事例を交えて深掘りします。

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イノベーション人材とは「頼まれなくても、やる人」

 皆さんは「イノベーション人材」と聞いて、どのような人物像を思い浮かべるでしょうか。斬新なアイデアを次々と生み出す天才肌でしょうか? 最新技術に精通したエンジニアでしょうか? あるいは、なぜか他社・他業種に顔が利く事情通でしょうか? もちろん、そうした方々もいますが、現場で新しい試みの種を蒔き、育てようとしている方々は、もっと身近な存在かもしれません。

 もし「イノベーション人材とは?」と問われたなら、私は「頼まれなくても、やる人たち」だと答えます。

 明確なミッションとして与えられていないのに(あるいは与えられた以上に)、短期的な人事評価につながる保証もないのに、それでも彼ら・彼女らは動くのです。これまでにない着想を得て、それを実現するために未知の場所に足を運び、新たな協力者を見つけ出し、一歩ずつ実現に近づいていく。

 なぜ、頼まれなくてもそれほどまでに頑張れるのでしょうか。ここからは、私が見てきた3つのケースをご紹介しますが、そこには損得勘定を超えた、内なる衝動や強い危機感がありました。

ケース1:失われた「熱気」を取り戻したいという危機感

 長年現場一筋で働き、現在は本社に所属するある方は、自社の現状に強い危機感を抱いています。

 業界では依然として首位を走り、業績も好調。しかし、社内からは「誰も見たことがないものを作るぞ!」という、かつての熱気が失われてしまったと彼女は語ります。近年、これといったヒット商品が生まれていないことが、その焦りを増大させているのです。

 「このままでは会社が本当にまずい」。その強い想いから、誰に指示されたわけでもなく、会社にイノベーションのマインドを取り戻したいと考えるようになりました。「これからの10年間は、私が社内の風土変革を担うと決めています」。新しい挑戦には多くの部門との調整が不可欠で、必ずしも歓迎される場面ばかりではないそうですが、会社を愛するからこそ、やるべきだと信じる道を淡々と進めています。

ケース2:誰かの「もっとこうなったら」を実現したいという使命感

 別の企業に勤めるある方は、外部の技術や事業モデルの探索というミッションに従事していますが、人並外れた熱意で「頼まれた以上に」取り組んでいます。

 彼女は常に新しい技術やスタートアップの動向にアンテナを張り、それらを活用して自社の拠点をさらに改善できないかと可能性を探り続けています。

 しかし、こうした活動は現場の既存のやり方に変更を求めるため、「今は忙しい」「現状のままで問題ない」といった反応に直面することも少なくありません。時に嫌われ役になりかねない取り組みを、なぜ続けられるのか。そう尋ねると、彼女はこう答えてくれました。

 「たしかに大変ですが、こういう地道なことは誰かがやらなければいけないと思うんです。『おかげで業務が楽になったよ』『実はこんなことができたら、と思っていた願いが叶ったよ、ありがとう!』。その言葉がすべてですね。それを聞くと、ああ、やってよかったと心から思えます」。

 誰かの役に立ち、組織に貢献できているという確かな実感が、彼女の活動を支える大きなモチベーションになっているのです。

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「イノベーション人材」が企業を持続的に発展させる

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この記事の著者

三吉 香留菜(ミヨシ カルナ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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