社外の「同類」との出会いが、あなたを再起動させる
あなたが組織の中で孤独に走り続けているように、他の組織や他の企業にも、同じ志を持ち、自分たちのやり方で試行錯誤を続ける人々が必ずいます。すべてを解決する特効薬はありませんが、そうした人々とつながり、励まし合うこと。結局のところ、これに尽きると私は考えます。
社内のしがらみや政治に巻き込まれ、当初目指していた目的や情熱を見失ってしまうことは誰にでもあります。壁にぶつかった時、同じ組織の人間には相談しにくい、あるいは相談しても既存の枠組みから抜け出せないアドバイスしか得られない、ということも少なくありません。この状況を打破するには、部門や企業といった「外部」からの刺激が不可欠です。
たとえば、私たちが森ビルと共同運営するインキュベーションセンター「ARCH」は、まさに大企業でイノベーションを担う担当者が集う場です。入居企業の皆さんが口を揃えて価値として挙げるのが、「悩みを共有できること」。社内では少数派として奮闘する苦しさを分かち合えることが、このコミュニティの重要な機能の一つなのです。
とはいえ、誰もがこうした環境にアクセスできるわけではありません。代わりに本やインタビュー記事を読んでも、そこにあるのは美しく編集された成功譚ばかり……と感じることも多いでしょう。
極めてアナログな方法ですが、近年はスタートアップイベントやイノベーションに関するカンファレンスが数多く開催されています。そこであなたが本当に会うべき相手は、他社・他業種の「同類」ではないでしょうか。状況は違えど、同じ課題意識を持ち、挑戦を続ける仲間たちと、一度きりではなく定期的に対話する。次に会う時には、悩みの吐露だけでなく、あなた自身が次の一歩を踏み出した話ができたら、素晴らしいと思いませんか。

イノベーションの鍵は「諦めない」こと。時には外部の人間に背中を押してもらおう
日々、大企業のイノベーション担当者の方々と対話する中で、私のような外部の人間が果たすべき役割は、「諦めさせないこと」なのかもしれない、と考えるようになりました。
もちろん、皆さんは多大な労力を惜しまず、使命感を持ってやり遂げようとする方々です。それでも、イノベーション活動は長期戦であり、成功は約束されていません。「Fail Early, Fail often」という言葉が示す通り、無数の失敗を繰り返しながら、どうにか前進する取り組みの連続です。
その中で、「本当に実現できるのだろうか」「もう無理かもしれない」と感じる瞬間は、誰にでも訪れます。そんな時、「あなたが本当にやりたかったことは何でしたっけ?」「きっと大丈夫ですよ」と、その人の原点である“志”に立ち返る機会を作ること。それが、非常に重要だと感じています。
イノベーションは、一部の天才だけが起こすものではありません。現場で、自らの想いや危機感を胸に「頼まれなくても」行動を起こし、孤独な自律自走を続ける多くの人々の努力から生まれます。しかし、その道のりは平坦ではなく、疲弊し、立ち止まりそうになるのは当然です。そんな時、外部からの客観的な視点や、原点への問いかけが、彼ら・彼女らが持つ素晴らしい力を望ましい方向へ導くための指針になるのかもしれません。
「イノベーション迷子のためのグラフィックガイド」と題したこの連載が、ささやかながら、日々奮闘する皆さまのガイドとなっていれば幸いです。
