プレッシャーに打ち勝つ秘訣は「〇〇に立ち返る」
椿:役員に就任されてから、どんな変化がありましたか?

秋庭:これまでは「自分の事業を潰さないこと」を主眼に置いていましたが、今は「第二創業期を迎えるLIFULLで事業をいかに成長させていくか」が主眼になっています。さらに、自分の事業だけでなく既存事業のLIFULL HOME’Sも含めて成長戦略を描く必要があるため、視座は確実に変わりました。
椿:経営人材として活動するにあたり、新規事業責任者の経験は有効だと感じますか?
秋庭:間違いなく有効ですね。事業の立ち上げを経験したことで、ビジネスの視野が広がりました。全体像を捉える力が養われましたし「ここからここまでが自分の担当範囲です」という考え方には至りにくいです。
椿:逆に新規事業の責任者を務めるデメリットはありますか?
秋庭:大きな裁量と引き換えに、大きな責任が問われることでしょうか。数字に対する責任はもちろん、チームメンバーがいる場合は彼らの仕事や生活に対する責任もともないます。ただ、全てが数字で可視化される分、わかりやすいとも言えますよね。
椿:秋庭さんはそのプレッシャーをどう乗り越えたんですか?
秋庭:自分のモチベーションの源泉に立ち返りました。私の場合は「子育てと仕事をハッピーに」というコンセプトがモチベーションの源泉で、このコンセプトを実現する人が増えることに喜びを感じます。増やせた人の数が売上につながるという意味で、数字は指標でしかありません。
たとえば「LIFULL FaMのおかげでこんな仕事ができています」という声を聞くと「こういう人をもっと増やしていこう」と思えます。数字の裏にある源泉を忘れず、折に触れて立ち返ることが私なりのプレッシャーに打ち勝つ秘訣です。
あえてチャレンジワークを渡すマネジメントの効用
椿:秋庭さんのようなイントラプレーヌは、どうすれば増えると思いますか?
秋庭:人事部でお世話になった上司のマネジメントが私の礎になっていると思います。当時の私は時短勤務でした。時短勤務の場合はルーティンワークを渡されがちですよね。その判断が理にかなっているケースもあるとは思いますが、私はいわゆるチャレンジワークを渡されていました。たとえば「企業家マインドのある学生に向けたブランディング」など、ふわっとしたオーダーから企画を立て、スケジュールを引き、社内外の人を巻き込んで実行する。これを経験することによって、0→1の筋肉が鍛えられました。
椿:確かに、通常業務でも0→1のトレーニングはできますね。
秋庭:実はマネジメントの立場から見ても、チャレンジワークは渡しやすいはずなんです。任せたメンバーが家庭の事情で急に休んだとしても、ルーティンワークほど影響は大きくありませんから。

秋庭:チャレンジワークを時短勤務でやり切るにあたり、その上司には相当サポートしてもらったのですが、最終的な成果は私のものにしてくれたんです。このときに育まれた自己効力感が、新規事業にチャレンジする背中を押した気がします。あえてチャレンジワークを渡すマネジメントが広がれば、私のようにチャレンジする人も増えるんじゃないでしょうか。
椿:最後に、読者の背中を押すメッセージをお願いします。
秋庭:女性執行役員第一号のキャリアを切り拓くことができたのは、新規事業という“飛び道具”があったからだと感じます。女性が生活を送る上で直面する課題は多いはずです。自分だけでなく他の人も困っている課題であれば、事業化して解決することには大きな価値があると思います。もしアイデアの種があれば、ぜひチャレンジしてみてください。
椿:素敵なお話を聞かせていただきありがとうございました!
