経営企画の役割は予算の正しさを担保すること
経営企画部門の担当者になりたての頃は、各部門から予算数値を集め、Excelやシステムのフォーマットに入力して、資料を作ることが自分の仕事だと思いがちです。

ただ、その場しのぎで集計だけして予算をまとめてしまうと、後で苦労することになります。「この予算の前提は?」「達成できる見込みは?」と問われても、その数字の背景や根拠を説明できないためです。
各部門が立案した予算をそのまま反映するのは危険です。第二回で触れたとおり、各部門が予算を適切に策定できるとは限りません。単純なミスのほか、根拠が薄いまま前年度を踏襲していたり、意図的に自部門に有利な“守り”の予算を入れていたりすることもあるでしょう。
予算を編成する際、経営企画部門の担当者が果たすべき重要な役割は、提出された予算を鵜呑みにせず、その正しさを担保することです。「なぜこの数字なのか」と疑問を持ち「本当にそうか」と検証し、必要なら各部門に確認して修正します。そのためにも、予算の前提となる事業の現状や目標を、数値の面では各部門と同等あるいはそれ以上に理解しておく必要があるのです。
では、予算作成の実務では何を意識すれば良いのでしょうか? 今回は、最初に押さえるべきポイントを勘定科目ごとに解説します。
予算は事業の意思、つまり事業のありたい姿を数値化したものです。中でも事業戦略そのものの数値化と言える売上予算は、単純に思えて初任者がつまずきやすい項目でもあります。
最も重要なことは、売上を構成するKPIの理解です。売上高は商品やサービスの販売単価や販売数量といった各KPIの仮説の積み上げでできています。また、単一部門のみで完結することなく、部門を横断して複雑なKPIツリーを形成することが多いです。
経営企画部門の担当者は、まず自社の売上高の背景にあるKPIツリーの成り立ちを把握しましょう。業界や製品で異なりますが、たとえばSaaS事業(BtoB)の場合は簡易的ながら次のような成り立ちが考えられます。
KPIツリーの理解が売上予算の精度を決める
KPIツリーの成り立ちを把握できたら、次は各数値の整合性を見極めます。過去の実績と比べて現状の予算が合理的かどうかを確認し、差が大きい場合は「なぜそうなるのか」を掘り下げて理由の妥当性までチェックします。
あわせて、今後の経営方針に沿うかどうかの検証も欠かせません。大幅な売上拡大を掲げているのに実績とほぼ同水準の予算なら、ターゲット・セグメント拡大による販売数量アップや、機能追加による単価改善など、何らかのパラメーター変更が必要になります。
さらに、部門ごとのKPIをツリーとして連ねたときの整合性も担保しましょう。たとえば次の事例では、一見するとセールス部門が未達に思われます。
【予算】
セールス部門の販売目標:6社/月
マーケティング部門のコンタクト可能顧客獲得目標:30社/月
【過去の平均的な実績】
セールス部門の販売実績:3社/月
マーケティング部門のコンタクト可能顧客獲得実績:30社/月
実績では1ヵ月で30社のコンタクト可能な顧客を獲得し、3件/月の受注を獲得しているため、10%の受注率が実力値です。しかし、予算ではマーケティング部門が実績同等の目標であるのに対し、販売目標は2倍に増えています。
では、頭ごなしに予算を棄却すれば良いのでしょうか? 話はそう単純ではありません。予算の根拠が「顧客属性の変化」や「施策の変化」などにある可能性も否めないため、部門に確認する必要があります。
上記の例は非常に単純ですが、数字で比較を行うことによって「なぜ」という疑問を抱くことができます。経営企画部門の担当者には、この「なぜ」を明らかにした上で、数字の背景の理解と必要に応じた修正が求められているのです。各部門の担当者も、予算の立案段階で関連部署と調整しているはずですが、全体を俯瞰して正しさを担保するのは経営企画部門の役割です。
