イトーキは2025年11月5日、AI解析によって自動物流倉庫設備の故障兆候を事前に検知できる予知保全システム「スマートメンテナンス」を開発したと発表した。このシステムは、リモートで設備の稼働状況把握・復旧支援ができる「リモートメンテナンス」と一体となった保守サービス「ITOKIアドバンスドメンテナンス」として、2026年1月から販売予定である。
本システムは、日本オラクルの「Oracle Autonomous AI Database」と「Oracle Cloud Infrastructure(OCI) Data Science」を基盤に、自動物流倉庫「システマストリーマー SAS-R」の稼働データを収集・解析する。センサーや制御装置から稼働時間、動作回数、動作距離といったデータを収集し、AIによる異常検知アルゴリズムが設備の状態や故障の兆候を判断する。これにより、突発的な設備停止のリスクを軽減し、安定的な業務運用と計画的な保守を実現する。
「ITOKIアドバンスドメンテナンス」は主に3つの機能を持つ。
1つ目は、部品交換時期の最適化であり、実際の稼働データに基づき、必要十分なタイミングで部品交換の通知を行う。これにより、過剰な早期交換を防ぎつつ、故障の未然防止につなげる。
2つ目は、AIによる異常検知と自動入庫制限である。設備の異常が感知された場合、当該機器に入庫を制限し、出庫のみ継続稼働させることでシステム全体の停止連鎖を防ぐ。現場での突発的なダウンタイム抑制に寄与する。
3つ目は、リモートメンテナンス機能で、遠隔から稼働状況やログを確認し、現場に赴くことなく制御盤操作や一部ソフトウェア更新が可能となる。これにより、保守員の派遣頻度や人的負荷を低減し、復旧対応の迅速化も実現する。
AIによる異常検知システムの開発では、設備から得られる膨大なセンサーデータを蓄積・加工し、環境や設備個体ごとのデータ差分を補正。さらに、業務知見と解析技術を融合した特徴設計を行い、AIが微細な兆候も高精度に検知する。
物流業界では深刻化する人手不足やEC市場の拡大など背景に、物流・倉庫自動化の急速な進展が求められている。一方で、突発的な設備停止による運用リスクは依然として大きな課題である。今回の新サービスは、現場の安定運用と計画的なメンテナンス計画の両立を目指している。まずは自社シャトル式自動倉庫向けに提供を開始し、今後は他の物流設備や関連分野への展開も見込む。
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