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次世代の経営者に向けた「新・リベラルアーツ論」──単なる知識はAIに任せ、見極め/問う力を養うには?

パネリスト:日本たばこ産業 岩井睦雄氏、タイミー 小川嶺氏、日本IBM 井上裕美氏

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「当たり前」を疑う力。リベラルアーツが拡張させるリーダーの引き出し

 リベラルアーツは、単に危機を乗り越える「軸」となるだけではない。セッションでは、それがリーダーの視野を広げ、イノベーションの源泉となる「What(機能)」についても議論が及んだ。

「当たり前」を疑う力。IBM井上氏が語るグローバル経営とレジリエンス

 日本IBMで技術者からキャリアをスタートし、コロナ禍で数千人規模の子会社社長を務めた経験を持つ井上氏は、リベラルアーツの機能を「多様な引き出しを持つこと」と表現する。

 井上氏がその重要性を感じたのは、まさに子会社の社長就任時だった。官公庁担当一筋だった自身が、金融、製造など全く異なる業界の顧客を持つ会社を、しかもコロナ禍でリモート環境の中、率いることになった。「専門外の人事やファイナンスも当然知らなくてはいけない。その時、必要に迫られて学ぶのではなく、自分の好奇心と共に学ぶ素材としてリベラルアーツが生きてきた」と語る。

 もう一つの機能が「レジリエンス(回復力・しなやかさ)」だ。予測不能な事態が起きたとき、「自分だけの軸で持っている引き出しでは、体制として継続性がない」と井上氏は指摘する。その「引き出し」を増やすきっかけとなったのが、グローバルな視点だ。

「二児の母として育児との両立が大変だと米国本社の女性リーダーに話すと、『なぜ外部の子育てサービスを活用しないの?』と真顔で聞かれる。日本では『家族で調整するもので、その中でどうするか』となりがちですが、海外ではその考え方が通用しない。この視点の違いが、日本のダイバーシティ推進や制度設計のヒントになりました」(日本IBM 井上裕美氏)

 IBMには「学びの飽和点はない」という言葉があるという。技術は絶えず進化しているため、こうした多様な視点(引き出し)を学び続けることが、変化に対応するレジリエンスの源泉となると強調した。

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日本IBM 取締役執行役員 井上裕美氏
2003年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。 官公庁業界を中心としたお客様のコンサルティング、システム開発、保守運用に携わる。 官公庁業界のリーダーを経て、2020年7月より日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員および日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社(IBM Japan Digital Services Company: IJDS)代表取締役社長に就任。 2022年4月、日本IBM取締役就任。 専門領域は基幹系およびDXに関わるシステム全般、プロジェクトマネジメント。2025年に日本IBMに帰任し、AIを活用した高度なアプリケーション開発・保守、アウトソーシングを担当するアプリケーション・オペレーションズ部門を率いる。 若手技術者や女性技術者コミュニティなど、女性技術者が活躍できる環境づくりを推進し、プライベートでは二児の母。

終身雇用の終焉と「機会提供のインフラ」という発想

 小川氏は、リベラルアーツを「興味開発の起点」と捉え、それが事業のイノベーションにもつながっていると語る。「お二人(岩井氏、井上氏)は新卒入社から同じ会社にいらっしゃるが、これからのZ世代には終身雇用という前提はない」と小川氏は指摘。

 転職が当たり前の時代には、個人が「自分はなぜこの産業に行きたいのか」を自らの興味という観点で考える必要があり、その土台として教養が求められる。この「興味開発」の敷居を下げる試みが、タイミーが目指す「機会提供のインフラ」という構想だ。

「たとえば『調理師免許を取りたいが、専門学校に2年通うのは無理』という人がいた。しかし、働きたいスーパーの総菜コーナーに聞くと、『調理師免許より、魚を捌くスキルと衛生知識が欲しい』と言う。ならば、2年間ではなく、そのスキルだけを3ケ月で学べる機会を作り、タイミーでまず体験してもらえればいい」(タイミー・小川嶺氏)

 まず体験(行動)することで興味が生まれ、教養が深まっていく。タイミーは、働くことを通じて人々の教養を高める「機会提供」のインフラになろうとしている。これは、労働市場の変化というマクロな視点(教養)が、事業の新たな定義(イノベーション)を生み出した好例と言える。

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AI時代に「問われる力」、明日から教養を磨く「3つの行動」

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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