シンギュラリティは、すでに始まっている
コンピュータの知能が人間の知能を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)はいつ起こるのか。起こったら人間はどうなるのか。このところの人工知能(AI)の進化により、こうした議論が盛んになっているが、ワークスアプリケーションズCEO牧野正幸氏は「シンギュラリティは、すでに始まっている」と考える。同時に、産業革命にも匹敵する大きな変化にも関わらず、あまりにも日常的なために気づきにくいとも指摘する。
技術が一気に進化していくときには、静かに変わっていく。実は、私たちはPCやスマートフォンで(シンギュラリティを)体感しているんです。それでも、ただ便利になるだけですから、そこでシンギュラリティが起こっているとは思っていないんです。
このように、私たちが日々触れるコンシューマー機器の領域では実用化が進んでいる人工知能だが、実はサービスやセールス、オフィスワークなどの業務領域ではまだほとんど活用されていない。そうしたなか、この冬リリースされたワークスアプリケーションズの新ERP製品HUEは、人工知能を内蔵した世界初の業務システムという点で画期的だ。
HUEは単純な人工知能を搭載したばかりだが、第一歩を踏み出したことで人工知能と人間の仕事は、共に進化が加速されると牧野氏は予見する。
人工知能が人間の仕事を進化させ、人間の仕事が人工知能を進化させていく。この繰り返しによって、大きなパラダイムシフトが起こると思っています。
人工知能による自動解析や自動学習を取り入れたHUEで、オフィスワークは具体的にどう変わるのか。人工知能ならではのその新機能をいくつか垣間見てみよう。
■入力作業を限りなくなくす
人工知能が過去に入力された単語やそのパターンといった情報をすべて記憶・再利用して、入力作業をできるだけなくすよう設計されている。最初の一文字を打てば入力したい情報の候補リストが表示されるので、情報はそこをクリックして選択するだけでよい。
■作表業務を自動化する
データを簡単に追加・削除、並び替えられるエクセルシートのような機能をERPの人事や会計のデータに導入、その結果はそのままデータベースに反映される。また、メールで受け取った添付ファイルが自動でERPに保存されるといった機能もあり、たくさんのシステムを同時に開く必要がない。
■コミュニケーションの簡易化・迅速化
LINEのように気軽に会話ができる機能(HUEトーク)を搭載。ERPのデータと連携した業務データや資料の共有も含め、関係者間のコミュニケーションが促進される。業務画面を開いた状態でだれかに質問したい点があればその場でトークを立ち上げ、両者で画面を共有しながら確認することなどができる。
顧客の要請に応えながら充実させてきた従来のCOMPANYの機能に人工知能による自動解析と自動学習の能力を追加し、総務・経理系の交通費精算や給与計算、人事系の業務評価といった部門ごとに特化された作業も効率性が高められるよう工夫がなされている。HUEについては、以下のサイトやコンセプト動画で概要が紹介されている。
牧野氏のオープニングスピーチに続き、同氏とGoogle X創設者セバスチャン・スラン氏が、「人工知能は、ビジネスをどう進化させるか」をめぐって話し合った。