キリンと日立は2025年12月、消費者の飲料選択理由や飲酒行動を科学的に解明するための共同研究を開始した。キリンが保有する大規模な消費者嗜好データや飲料成分データと、日立のマルチモーダルAI技術、行動科学、デザイン思考を融合し、商品開発や健康意識の高まりといった社会的課題に取り組む。

消費者の飲料選択や飲酒行動は、味、香り、成分、パッケージ、生活環境など多様な要素が複雑に絡み合っている。消費者の嗜好の多様化により、どのような商品が選ばれるかを科学的に理解することは商品開発の高度化において重要なテーマであった。また、健康・安全への社会的関心が高まる中、適切な飲酒行動の背景要因を明確にし、より良い消費行動選択の基礎を築くことが求められている。
研究は2つの柱で進められる。第一に、飲料の特徴や消費者評価など、異なるデータを統合してAIで分析する手法を検証し、飲料選択に影響する要因の科学的な可視化と整理に挑む。これにより、商品開発初期段階から、継続的に選ばれる味やコンセプトを科学的に検証できる仕組みの構築を目指す。第二に、行動科学やデザイン思考を用いて、健康・安全を考慮した飲酒行動の要因となる認知・感情・環境などの分析を行い、適正な飲用行動を促進する施策や社会全体の健康増進に役立つ知見の獲得を進める。
本研究は、キリンが自社の消費者嗜好調査結果や成分分析値を集約しAI・統計解析につなげる「嗜好プラットフォーム」を活用した取り組みの一環である。
両社は、今回の共同研究で得られた知見を商品開発への意思決定の高度化や飲酒行動への理解深化に活用し、AI・行動科学による価値創出や社会課題の解決に寄与したい考えだ。また、獲得した知見や手法を他分野への応用も視野に入れ、社会的価値創出の可能性を柔軟に探っていくとしている。
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