MVV策定プロセスを追体験するツール「プレイブック」
根岸:現段階でのプロジェクトの成果物として、単なる冊子ではなく「プレイブック(行動指針書)」を作りました。FDLとしてはどのような意図で「プレイブック」を作ったのでしょうか
田中:MVVは作って終わりではなく、定着化こそが本番だと思います。FDLは特に人事異動で別部署から来る人や中途採用が多い職場です。新しく来たメンバーが初日に「この組織は大切にしているのはこれなんだ」と直感的に理解できるツールが必要でした。
このプレイブックは、結論だけを並べるのではなく、私たちが経験したワークショップの流れを「追体験」できる構成にしています。なぜこの言葉に辿り着いたのか、そのプロセスを共有することで、参加していないメンバーとも熱量を分かち合いたいと考えました。
根岸:私からの提案資料でも「情報発信の高度化による採用力強化」を掲げましたが、このプレイブックは社内だけでなく、社外への「Who we are」の表明、つまり採用ピッチ資料としての役割も意図して作成しました。
「生きているMVV」。定点観測で組織の“違和感”を見逃さない
根岸:完成したMVVを今後どのように運用していく予定でしょうか。
田中:MVVは一度作ったら数年間固定するもの、という考えを捨てました。組織は生き物ですから、メンバーの顔ぶれや社会情勢が変われば、言葉への感触も変わります。
もともと月に一度全員がリアルで集まる会議があったのですが、その中でMVVに関する対話を設定しました。「今月の行動はバリューに沿っていたか」「今の言葉に違和感はないか」などを、定点観測していきます。スコアなどの定量指標や定性的な意見なども出し合い、違和感が大きくなれば、またみんなで見直せばいい。そう考えています。
坂井:MVVが「壁に貼ってあるだけの飾り」になるのが一番怖いですね。今回の「浸透に資するアプローチで作る」という経験そのものが、私たちの財産です。数年後、今のバリューが当たり前になり、「今の我々ならさらにこういうことができる」と自然にアップデートの声が挙がるようなカルチャーを醸成したいです。
根岸:最後に、これからのFDL、そして東急をどう変えていきたいか、その展望をお聞かせください。
田中:FDLは、いわば「東急の実験場」です。ここで培った「個人が想いを解放し、越境して動く」という文化が、いずれ会社全体に広がっていってほしい。制度や仕組みを超えて、社員一人ひとりが「自分が未来を作るんだ」というワクワク感を持って働ける土壌を作っていきたいですね。
坂井:中途採用の私も、今回のプロジェクトを通じて「東急の一員である」という強い当事者意識を持つことができました。この「個人と組織の結びつき」を、FDLに集まるすべての多彩な才能が感じられる状態にしていきたいです。
根岸:ロジックだけでは動かない巨大組織の中で、個人の「熱量」を燃料に変えるFDLの挑戦は、多くの日本企業にとっても大きなヒントになるはずです。本日はありがとうございました。

