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Airbnbやメルカリに見るイノベーションの正体「価値移転」──外部不経済を考慮した事業の可能性とは

ゲスト:グロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクター 野本遼平氏

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イノベーションの原則「価値移転」を理解せよ

栗原:本書の核心である「価値移転」とは具体的にどのようなメカニズムなのでしょうか。

野本:利益を生み出す方法は「安く仕入れて、高く売る」という極めてシンプルなものです。では、なぜ価値あるものを安く仕入れられるのか。それは「価値が認められていない場所」から「価値を認める場所」へ持ち込むからです。

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資料提供:野本遼平氏/クリックすると拡大します

 経済学者の岩井克人氏が説くように、利潤は「二つの閉じられた市場(流通の場)において成立している異なった価値体系同士が仲介されること」によって創出されます。かつての貿易商が香辛料を運んだように、現代のイノベーターは「社会・経済の断絶」や「情報の断絶」を跨いでリソースを運び、利潤を創出しています。これが「価値移転」によるイノベーションです。

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資料提供:野本遼平氏/クリックすると拡大します

栗原:具体的に、現代のビジネスで「価値移転」を体現している事例はありますか。

野本:わかりやすいのはAirbnbです。彼らが扱ってきたのは個人の「空き部屋」というリソースです。「プライベートな空間」というエコシステムでは、空き部屋は実質0円、あるいは友人を泊める程度の価値しかありません。しかし、それを「宿泊市場」という別のエコシステムに接続した瞬間、実質0円だったものに市場価格がつきます。また、Microsoftの初期のOSも、実は外部から安価に買い取ったものを、IBMが囲い込んでいる巨大な顧客ネットワークに仲介することで爆発的な価値を生みました。

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資料提供:野本遼平氏/クリックすると拡大します

 これらの成功事例を振り返ると、自分たちで何かをゼロから作ることよりも、分離されたエコシステムという「構造」と、その両方の世界を跨ぐ「ポジショニング」が共通項として浮かび上がります。

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フィジカルAIで起こる「取引コスト」の劇的な変化

栗原:現代はインターネットによって情報の非対称性が解消され、価値移転の機会は減っているようにも思えますが、いかがでしょうか。

野本:インターネットによる価値移転の機会は、たしかに減ってきているように思えます。しかし、技術パラダイムが変わるごとに、新たな「橋」が架けられます。かつては大航海時代の「船」が物品を輸送するコストを劇的に低下させ、直近では「インターネット」や「クラウド」が情報伝達や複製のコストを劇的に低下させました。技術パラダイムが変化するときに注目すべきは、「取引コスト」や「摩擦」の劇的な低下によって、リソースがどのように再定義されるかです。

 あるリソースが活用されていないとき、その背景には、当該リソースを加工・複製するためのコストや、取引相手を見つけ、信頼し、条件を交渉するためのコストが高いといった要因が存在することが少なくありません。

 メルカリを例に挙げれば、スマホのカメラで出品が容易になったことで、「パソコンでインターネットオークションに出品する」という煩雑さに見合うほどの値段はつかなそうなアイテムの「取引コスト」が下がり、「売れるもの」として再定義され、巨大な二次流通市場へとリソースが移転されました。

栗原:今、注目されている「生成AI」や「ロボティクス」は、「取引コスト」をどう変える可能性があるのでしょうか。

野本:「生成AI」や「フィジカルAI(ロボティクス)」は、人間の知的・身体的スキルの「複製コスト」と「移動コスト」を劇的に下げます。たとえば、これまで人間が一人ひとり現場にいかなければ成立しなかった作業を、AIロボットによって「身体スキルを無限複製し、クラウド経由で再現する」ことが可能になります。これは、「身体」という物理的な制約によって流通が阻まれていた身体スキルというリソースが、テクノロジーによって価値移転される典型的な例と言えるでしょう。

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イノベーションの副作用「外部不経済」を直視する

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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