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「変革の指揮者」としてのCFOの再定義──「ファイナンス“で”企業を変える」ための3つの提言とは?

PwC Japanグループ「CFO意識調査2025」メディアセミナーレポート

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CFO主導の「信頼されるAI(Responsible AI)」の構築

 生成AIの普及において、日本企業のCFO組織は複雑な立場に置かれている。PwC Japan有限責任監査法人の服部雄介氏は、AI活用の実態を「三角形の階層」で説明した。

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資料提供:PwC Japanグループ/クリックすると拡大します

 調査によれば、事務作業や資料作成といった「守りの領域」でのAI活用は60%に達している。しかし、対外公表に関わる決算業務や、経営判断を左右する「インサイト(洞察)」の領域での活用は10%台にとどまっている。「特に驚きだったのは、大企業中心の調査対象でありながら、13%の企業が『AIについてなにも取り組んでいない』と回答したことです」と服部氏は語る。

 日本企業がAI活用に慎重な理由は、AIの誤謬(ハルシネーション)に対するリスク感度の高さにある。特に、数値を1桁間違えることが許されない決算業務において、CFOが二の足を踏むのは当然とも言える。しかし、服部氏はこの慎重さこそが日本の強みになると主張する。

 「『生成AIは間違える』という前提を正しく認識しているからこそ、強固なガバナンスという『安全な高速道路』を敷くことができます。CFOはJ-SOXなどを通じて内部統制を担ってきたプロです。その統制力を活かし、守るべき一線を画定した上で、最大限のスピードを出す調整役を担うべきです」と服部氏は提言する。他国に比べ「期待した効果が出ていない」という日本の現状を打破する鍵は、CFO主導の「信頼されるAI(Responsible AI)」の構築にある。

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人材育成のパラダイムシフト“下積みなき応用編”

 あらゆる変革の基盤となるのは「人材」である。小林氏は、AIの進化がファイナンス人材の育成モデルを根底から覆していると警告する。

「これまでは基礎業務(下積み)を通じて数字に対するセンスや『違和感』を養ってきました。しかし、AIがその基礎業務を代替する今、若手はいきなり『応用編』からスタートせざるを得ないのです」(小林氏)

 調査では、CFOの51%が「キャリアパス・ローテーションモデルの再定義」を最優先課題に挙げている。これからのファイナンス人材に求められるのは、単なる会計知識ではない。ビジネス、DX、戦略、さらには法務、哲学や歴史といった広範な視野 を持ち、複雑なステークホルダーを束ねる「指揮者」の能力である。

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 「AIの結果が正しいかどうかを瞬時に判断する力、すなわち『ベテランの勘』に近い感覚を、実務経験が乏しい若手にどう継承してもらうか。これはもはやスキル教育の範疇を超え、経験のさせ方のデザインの問題です」と小林氏は語る。異業種や他部門との「他流試合」を積極的に取り入れ、ファイナンスの枠に閉じこもらない、多角的な視点を持つ人材の育成が急務となっている。

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CFOへの3つの提言:ファイナンス“で”変革を主導せよ

 セミナーの締めくくりとして、小林氏はPwC Japanグループとしての3つの提言をまとめた。

 第一に、「前提が変化することを前提として、変革を推進すべき」ということだ。不確実な時代、完璧な計画を立ててから動き出すのでは遅すぎる。多少の手戻りを許容し、「まず隗より始めよ」の精神で一歩踏み出す。その過程で得られる失敗もまた、組織のケイパビリティ(能力)となる。

 第二に、「AI活用はCFO組織自らが主導すべき」である。AIはDX部門に「やってもらう」ものではなく、CFO自らが自社の痛みに基づいてユースケースを選定し、成功体験を積み上げるべきテクノロジーだ。自ら手を動かすことで初めて、統制と活用のバランスが見えてくる。

 第三に、「組織と人材の変革は、指揮者を担う未来予想図に基づいて実施すべき」だ。これまでのCFO組織は「ファイナンス『を』変革すること」に注力してきた。しかし、これからは「ファイナンス『で』企業全体を変革すること」が使命となる。

 本レポートが読者に与える示唆は明確だ。経営企画やDXを推進するリーダーにとって、CFOはもはや「予算を管理する番人」ではない。事業ポートフォリオを動かし、AIガバナンスを設計し、次世代のリーダーを育てる「価値創造のプロデューサー」である。

 自社のCEOが「どの山に登ろうとしているか」を理解し、その登り方を共に設計するパートナーシップを築けるか。その一歩が、インフレ・AI時代における企業の勝敗を分けることになる。CFOが「変革の指揮者」としてタクトを振るえる環境を整えることこそが、経営企画部門の真の役割と言えるだろう。

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(左から)PwCコンサルティング合同会社 執行役員 Officer パートナー、PwC Japanグループ CFOコミュニティ責任者 小林たくみ氏/PwCアドバイザリー合同会社 パートナー 山口雄司氏/PwC税理士法人 パートナー 塩田英樹氏/PwC Japan有限責任監査法人 パートナー 服部雄介氏

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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