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“次世代のポーター”が語る「競争優位の構築と持続」

ニコライ・シゲルコ教授/「WGF東京2013」レポート:第3回

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“模倣”は競争優位を生み出すか?

 では、競争優位を生み出すには他社を模倣すればよいのか。もちろん答えは「NO」だが、総合品質管理(TQM)やジャストインタイム(JIT)、シックスシグマなどの手法はどれも模倣の仕方を教えているものだ。いずれも1つの経営手法ではあるが、「戦略」とは言えない。

 オペレーション効率について考えることが、戦略について考えることだと勘違いしている企業は多いが、オペレーション効率(ベストプラクティスの実現と拡大)と戦略的ポジショニング(ユニークで持続可能なポジションを生み出すこと)は別物である。

 私は企業の経営幹部からこんな相談をよく受ける。

 「当社はかつてないほど経費削減と効率化に成功している。社員も勤勉だ。しかし、利益率はさっぱりだ。なぜなのか」

 競合他社もまったく同じことをしているからだ。絶対的な改善がなされているからといって、相対的な競争優位が生み出されるとは限らない。高い収益性を実現するためにはオペレーション効率の向上は必須だが、それだけでは競争優位を生み出すには十分でない

「競争の収れん」という問題

 さらには、模倣による「競争の収れん」という問題がある。競合企業各社がベストプラクティスを模倣し合い、効率改善を図れば、どの企業の効率性も高まり、各企業が似たものどうしになっていく。

 「競争の収れん」については、IT業界を考えれば分かりやすいのではないだろうか。検索に強いグーグル、デザインに強いアップル、小売で先行しているアマゾン、ソーシャルのフェイスブック・・・。いずれも独自性を発揮して成功している企業だが、互いに他社の強みを模倣しようとして競争の収れんが起こり、各社の事業が重複し始めている。各社が成長拡大を目指せば、競争の収れんは避けられない。

競争優位の源泉は「企業の諸活動」

 競争優位の源泉は、企業の諸活動の違いにある。企業というのは、個々の活動の集積で、そこに競争優位があるのだ。つまりある企業の競争優位の源泉を知りたければ、その企業の様々な活動を1つ1つ調べる必要がある。

 活動を項目化して、自社がやっていて他社がやっていない、逆に他社がやっていて自社がやっていない活動を洗い出せば、何が差別化を生み出しているかについてファーストアイデアが掴めるだろう。

競争優位の源泉である諸活動を掴む▲ 図表4.競争優位の源泉である諸活動を掴む

サウスウエスト航空が作り上げた「活動システム」

 サウスウエストは、格安航空界会社として大きな成功を収めている格安航空会社である。サウスウエスト航空の競争優位の源泉は、コアコンピタンスという視点からすれば、航空機の回転率の高さ、インセンティブ制度、労働組合との弾力的な契約などがある。

 同社の諸活動をより細かく見ていくと、サウスウエストは、下の図表5のように様々な活動からなる1つの活動システムを作り上げている。座席指定、機内食、荷物積み替えなどの乗客サービスはなし。混雑の少ない中小都市の空港を直接結ぶ2地点間短距離便のみの運航とし、機体を1種類に統一するなどして、徹底的な効率性改善や費用削減を実行し、低価格や航空機活用率の高さを実現している。

サウスウエストの活動システム▲ 図表5.サウスウエストの活動システム

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模倣の難しさ:コンチネンタル航空の対抗例

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