実は知られていないPDFの編集機能
実はPDFについては、誤解がある。PDFは編集不可能と思われがちで、「PDFだけでは不安なのでWordやPowerPointの元データもとっておくべき」と多くの人が考えている。 PDF形式のままでも、作成に使ったWordやPowerPointなどの形式に戻して編集することもできる。文書のテンプレート情報が組み込まれているのだ。
PDF開発元のアドビのマーケティング本部の大矢博文氏はこう語る。
実はPDFにはOfficeのテンプレートが反映されています。Officeのファイルに関しては、かなり内部構造まで踏み込んで再現しています。編集されたくない場合は、セキュリティ設定で制限することができます。
アドビ システムズ 株式会社 マーケティング本部 Document Cloud マーケティング 執行役員 大矢博文氏
デジタル化しても煩雑化が減らない理由
日本企業の場合、個人ではドキュメントのデジタル化が進んでいるものの、企業としてのドキュメントの電子化とマネジメントはまだまだ遅れている。 会社のガバナンスという視点でみた場合、電子化されたドキュメントの課題は山積みだ。たとえば、電子化されたドキュメントがどこに流れ、どう使われているのか把握するのが難しい。モバイル機器のセキュリティの担保はどうするのか。ドキュメントを受けた側もデバイスによって見え方が違い、場合によっては使えない。
また大企業でも必ずと言っていいほど、紙をスキャンした古いデータが残っており、それが通常のビジネスの中で回っている。様々な稟議や申請などが、コンピュータで入力されても、紙で出力され、捺印のための回覧がおこなわれるなど。データで出力された情報を得たあと、さらに手で別のシステムに入力するなど。こうしたドキュメントとデータの煩雑化が、会社の生産性を低下させているのだ。 また、定型化された文書は問題ないが、個人それぞれの裁量で使い方や使われ方が違うドキュメントというものを、どのようにマルチデバイスの時代に適応させていくかも大きな課題となっている。
添付ファイルはなにが問題なのか?
紙のドキュメントによる業務プロセスも問題で、アドビが2015年3月に公表した調査によると、日本のビジネスワーカーの75%が生産性の妨げになっていると回答している。加えて別調査では、企業内にある色々なエンタープライズ系のシステムが連携していないため、77%の人が「ギャップがある」と感じているという。
たとえば見積書などを添付ファイルで送った場合。相手が開き、アクションがあるまでプロセスがストップしてしまう。様々な社内の連絡文書も同様だ。
では、アメリカではどうなのか?アドビ米国本社、Acrobat ソリューションズの山本晶子氏は「特に北米の企業はデジタル・トランスフォーメーションに力を入れており、選任の担当者を置く企業も多々出てきています。とはいえ多くの企業では、アメリカも日本と事情はそれほど変わらないのです。」と語る。

欧米の企業は根回しやハンコ文化の日本よりも進んでいるというイメージがあるが、やはり分断されていることは同じなのだと山本氏は言う。上司のサイン(署名)待ちで何日も停滞することもしばしばだという。
添付ファイルは相手の自由裁量に任されるため、流出などの心配もある。もし相手が、開いていないのかを確認できれば、催促するなどの働きかけをする必要がある。