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「全社全員で使いこなす」トヨタコネクティッドのAI推進部門リーダーが人材育成と環境づくりを語る

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 生成AIの活用を全社で定着させるには、使う人・支える人・仕掛ける人が必要だ。トヨタコネクティッドはAI活用推進のための特命チームを立ち上げ、人材の育成と現場が自ら活用を続けたくなる環境づくりに取り組んできた。メンバーズが主催した「DXリーダーズ・カンファレンス2025」には、その特命チームをリードする山本玄人氏が登壇。実際の育成施策や文化醸成の仕掛けなどを語った。本稿ではその内容をレポートする。

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変革期を迎える自動車業界

 トヨタ自動車のグループ会社であるトヨタコネクティッドは、コネクティッドカー事業を通じて培ってきたITとモビリティの知見を活かし、AIを全社的な業務・人材変革の「戦略的パートナー」と位置づけている。

 同社はAIで業務効率を追求するだけでなく、従業員一人ひとりの意識、ひいては組織文化そのものを変革するという、より高次元の目標を掲げている。「我々自身がAIを使いこなせていないと、組織として価値を提供することは難しい」と語るのは、同社でAI/InfoSec統括部エンゲージメント推進室室長を務める山本玄人氏だ。

トヨタコネクティッド AI/InfoSec統括部 エンゲージメント推進室室長 山本玄人氏
トヨタコネクティッド AI/InfoSec統括部 エンゲージメント推進室室長 山本玄人氏
2017年EYアドバイザリー株式会社(現:EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社)に入社。DXに関わるプロジェクトに従事。メガバンク、地方銀行などの大手金融機関を中心に製薬会社といった非金融企業も支援。その後、ハイパーオートメーションを主事業とする株式会社ITSOにジョイン。AX/DXに関わるプロジェクトに従事。フロント・バックオフィスの効率化において、デジタル化構想策定から開発~運用工程までを経験。2024年からトヨタコネクティッド株式会社にジョイン。現在は、AI/InfoSec統括部エンゲージメント推進室室長として、社内の生成AI活用を推進。

 「CASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)」をキーワードに大変革期を迎えている自動車業界では、ソフトウェアとデータが競争力の源泉となりつつある。これまでのITシステム開発・運用に加えて、AIをサービスの中核に組み込むことは、同社の成長に不可欠だと考えられていた。

 しかし、AIをサービスに組み込む前に、まず自社の組織と従業員がAIを使いこなせる状態になる必要がある。この点について山本氏は「AIが仕事を取って代わるのではなく、AIとどう共存して一緒に働いていくのかを考えなければならない」と指摘。この言葉は、AI導入が雇用不安につながるという従業員の潜在的な懸念を払拭し、AIを脅威ではなく戦略的パートナーとして捉えるための重要な視点である。

「ガイドライン」を「規則」に昇格

 「生成AIを全社・全員で使いこなす」という目標を達成するために、同社では役員直下の組織としてAI統括部が立ち上がった。AIの戦略と技術を両輪で推進する専門部隊として活動を開始したが、2025年4月に従来のコーポレート情報セキュリティ部門とコーポレートIT部門を統合したAI/InfoSec統括部に再編された。

「AIの活用にはセキュリティとITインフラが不可欠であり、これらを一体として管理・推進することで、よりセキュアかつ効率的なAI活用を実現するという、さらなる進化を見据えた組織再編です。この統合により、AIをITインフラ全体に組み込み、全社的な基盤として定着させるための体制が整えられました」(山本氏)

 トヨタコネクティッドのAI推進は、次の9つの領域を柱として体系的に進められた。

【クリック/タップで拡大】

 土台となるのは「会社方針」と「AIDX活用ルール整備」だ。生成AIを取り巻く法規制や技術は常に変化するため、ガイドラインを一度作成して終わりにするのではなく、継続的に更新できる体制を構築した。さらに、ガイドラインを従業員に対する拘束力が強い規則へと昇格するべく対応中。組織全体で遵守を徹底できる仕組みとしている。

 この強固な基盤の上に、同社は自社開発の生成AIチャットサービス「T-Copilot」を構築した。このサービスは、一般的な生成AIツールとは一線を画し、独自のセキュリティ基準に準拠しながら社内のナレッジを安全に活用できるよう設計されている。

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非エンジニアでも業務アプリが開発できる環境

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この記事の著者

渡辺 佳奈(Biz/Zine編集部)(ワタナベ カナ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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