2025年10月24日、セールスフォース・ジャパンは、M&A仲介業界のM&AキャピタルパートナーズがSalesforceのデータ基盤「Data 360」を導入し、企業の譲受・譲渡マッチング精度の向上や業務効率化を図ったと発表した。本取り組みは事業成長加速を目的とし、導入からわずか5カ月で年間計画の「トップ面談創出数」の96.6%を達成するなど、短期間で具体的な成果につながっている。

同社は従来、アドバイザー個人の知識やネットワークに依存することでマッチングの網羅性や効率に課題を抱えていた。この解決のためには、個人能力のみに頼らず、より多角的かつ再現性高く候補企業を探索できる仕組みが不可欠だった。
Data 360の選定理由は、Salesforce CRM上のマッチングデータをビジネスユーザー自らが活用し、迅速にアクションへつなげられる点にあった。構造化データ(取引先や外部データ)と非構造化データ(ヒアリングに基づくM&Aニーズ等)を統合し、独自のベクトルデータベース技術を用いることで、マッチング精度を引き上げている。
具体的には、売り手企業と類似性が高い買い手候補を多面的に抽出し、アドバイザーのマッチング精度向上を実現している。また、導入以降、トップ面談に進んだ買い手候補の約22%がAIから自動提案された企業であった。自動登録された候補のうち、実際にトップ面談に進んだケースも確認されていることから、システムによる価値が裏付けられた形だ。
現在は、買い手と売り手それぞれに近い企業や類似ニーズを検索する機能も実装済みで、データ活用の幅をさらに拡げている。今後はAIエージェント基盤「Agentforce」の導入も構想しており、ウェブサイト上にAIエージェントを設置することで買い手候補の問い合わせに自動対応したり、社内向けのAIによって成約事例や候補先情報のリストアップなどアドバイザーの支援も加速する予定だ。
M&Aキャピタルパートナーズの営業企画部IT推進課長・栁瀬開氏は、「Data 360でAIによる高精度マッチングを実現し、アドバイザーがコア業務に集中できる環境が整った。今後は更なる機能実装とAI活用で顧客体験と業務効率化の両立を目指す」とコメントしている。
今後も同社はデータとAI活用を推進し、M&A仲介業務の変革と成長を見据えた基盤整備を進めていく方針である。
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