Adecco Groupは、6度目となる年次調査レポート「Global Workforce of the Future(2025年版)」を発表した。

主な調査結果
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AIによる業務遂行能力の拡張
- 従業員の75%以上が、AIによってこれまでできなかった業務の遂行が可能になったと回答。また、従業員の約75%が、AIによって自身の職務に求められるスキルや業務内容がすでに変化している、あるいは今後変化すると認識。
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不確実性は依然として存在
- 回答者の76%がAIは新たな雇用を生み出すと予想し、70%が職務の再設計が進むと回答。一方で、23%は仕事を失うことへの不安を抱えており、安心を求めている。
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目的意識と信頼が重要な柱
- AIが自身の役割に与える影響や、自身の職務が企業戦略とどう結びついているのかを理解している働き手は、離職しにくい傾向が強まる。一方で、プライバシーへの懸念は44%に上昇。
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「未来対応型」人財が急増
- 2025年度の調査では、働き手の37%が未来対応型人財となり、前年の11%から3倍以上に増加。
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日本の働き手は、目的意識や主体的なスキル開発への意識において世界に後れを取っている
- 日々強い目的意識を感じている日本の働き手はわずか17%となり、世界の働き手による回答の平均(46%)を大きく下回った。
- スキル開発をより主体的に進めたいと考えている割合も14%にとどまった(世界の働き手の回答は平均34%)。
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日本の働き手はAIによる時間節約を実感しているが、節約時間・AIエージェント導入見通しともに世界平均を下回る
- 日本の働き手は、AI活用により1日あたり平均87分を節約できていると回答。一方、世界の働き手の節約時間は平均2時間。
- 自社が今後1年以内にAIエージェントを業務に導入すると予測している日本の働き手はわずか19%(世界の働き手の回答は平均55%)。
未来対応型の働き手
積極的にスキルアップを図り、新しい技術に適応する「未来対応型の働き手」は、より明確な目標設定やスキルにもとづくキャリア支援を受けていることが、本調査で明らかになった。
AIに対する期待は高まっているものの、依然として不確実性も残っている。回答者の76%がAIによって新たな雇用が生まれると予測し、70%が職務の再設計が進むと考えている一方で、23%は仕事を失うことへの不安を抱いている。
AIによって時間を節約できている一方で、働き手の3分の1はその時間を、それまでと同様の、あるいはさらに単純な作業に費やしていることがわかった。AIの活用によって生まれた効率性を従業員エンゲージメント、すなわち組織への帰属意識や貢献意欲、信頼につなげていくためには、雇用主は従業員が自らの業務の成果や影響を把握できるよう支援し、より意義ある付加価値の高い業務への移行を支援する必要がある。
目的意識の醸成とキャリア開発がリテンションの鍵
調査結果によると、明確な目的意識は人財の定着において極めて重要な要因であることが示されている。自身の役割が企業戦略にどのように貢献しているかを理解している働き手はより高いロイヤリティを示しており、日々強い目的意識を感じている働き手の99%が今後12カ月間も現職にとどまる意向を示す一方で、目的意識を感じていない働き手ではその割合は53%にとどまった。キャリア開発の重要性も高まっており、働き手の3人に1人が明確なキャリアパスがあれば現在の職場にとどまると回答。これは昨年の22%から大きく増加している。
AI時代における信頼構築と人間関係の重要性
働き手は業務の自動化やトレーニングにおいてAI活用には前向きな姿勢を示しているものの、キャリアに関する重要な意思決定には依然として人間による判断を望んでいる。調査レポートでは、リーダーや管理職はAIエージェントの活用に前向きである一方で、エントリーレベルの社員は不安を感じており、組織として透明性のあるコミュニケーションと倫理的なガイドラインの整備が不可欠であることが示されている。また、自身の役割への理解が深く、スキル開発に主体的に取り組む「未来対応型」の働き手は、AIへの信頼度が高く、こうした明確さと主体的な関与が信頼構築の鍵となることが明らかになった。
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