ネットワーク時代における5つのビジネスウェブ
最後に、協働ネットワークをベースとしたビジネスモデルの類型(ビジネスウェブ)をご紹介したいと思います(図表8)。これは、今世紀初頭に出版された『bウェブ革命』という書籍で説明されているものです。
1つ目のタイプは「広場」であり、これは買い手と売り手の間の交流を促進し、両者がその場の交渉を通じて価格を決めるメカニズムを提供するものです。オークション、取引所などはこのタイプの典型です。このタイプの重要な価値提案は、売り手と買い手の価格形成メカニズムを容易にし、交換される財の流動性を高めることです(図表9)。
2つ目のタイプは「アグリゲーション(集約)」であり、生産者‐消費者間の付加価値を提供する中間業者の役割を果たすものです。Amazon.comはこのタイプの典型例です。このタイプの重要な提案価値は、品揃え、コンテンツ、利便性、マッチング、注文処理を最適化することにあります。インターネットを活用したアグリゲーションは、ハブ、エージェント、ポータルと呼ばれる機能を提供します(図表10)。
3つ目のタイプは「バリューインテグレーション」であり、中核となるインテグレーターが、顧客の特定のニーズを満たすために多くの協業ネットワークの力を借りながら指揮統制して、価値を設計、構築、提供するものです。Dellや多くのシステムインテグレーターやデベロッパーはこのタイプの典型例です。インテグレーターは顧客価値の本質的な部分に集中し、他の協業ネットワークをコントロールします(図表11)。
4つ目のタイプは「流通ネットワーク」であり、情報やモノ、金銭や資源などを提供者から消費者に分配し、その取引とデリバリーを円滑に促進することが重要な価値提案となります。ヤマト宅急便やFedExのような物流に特化した企業はこのタイプの典型例です(図表12)。また、スマート・グリッドというテクノロジーが将来の電力ビジネスにおいて注目されていますが、これは新しいタイプの流通ネットワークとなるかもしれませんね。
5つ目のタイプは「キーストーン」であり、自律性の高い者同士による価値統合を実現するもので、現代における最もバーチャルな協働ネットワークです。中核となるキーストーンというリーダーが存在し、計画と方向性を定めます。参加者は生産者/提供者であると同時に消費者となるケースもあります。オープンソースをベースとしたソフトウェアビジネスは、このタイプの典型例といえるでしょう(図表13)。