連載・コラム 中西崇文の異端と先端のTech考現学

GoogleのAI「アルファ碁」は感覚をどのようにつかんだか

第二回

GLOCOMのデータサイエンス研究者、中西崇文氏の最新のデータ・テクノロジーをめぐる考察。第二回は、Googleの囲碁AIの人間へ勝利が意味するものについて。

[公開日]

[著] 中西 崇文

[タグ] AI・機械学習 テクノロジー

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GoogleのAlpha Goの勝利が意味するもの

 3月は人間にとって屈辱的なニュースが流れた。韓国のプロ棋士世界トップ級の実力者、イ・セイドルが、Google傘下の人工知能(AI)ベンチャー企業のDeep Mindの囲碁ソフトアルファ碁(Alpha Go)と5番勝負を行い、1勝4敗で負け越したのだ。衝撃を受けた人もいれば、いつかはコンピュータに負ける日が来るものだと思って見ていた人もいるだろう。専門家の間では、「囲碁でコンピュータが人間に勝てるのは、数十年先」とも言われていた。しかしながら、Alpha Goは鮮やかに世界トップ級のプロ棋士を破った。

 これまでのチェス、将棋などのゲームでAIが強くなったということと、囲碁でAIが人間に勝ったということは意味が違う。それは、「感覚をつかむ」という人間にしかできないと思われた能力をAIが身につけたことを意味する。AIが感覚をつかむ能力を得るとはどういうことか、探っていくことにしよう。

チェス、将棋ではすでにAIが勝利宣言

 すでに、チェスや将棋ではAIと人間の勝負はついている。  1997年、IBMのコンピュータDeep Blueが、チェスチャンピオンであるカスパロフを打ち負かした。Deep Blueは1秒に1億パターンもの探索ができる能力を備えており、ハードウエアとアルゴリズムの両方の向上によりコンピュータが人間を追いついた瞬間である。

 将棋に関しては、2015年、情報処理学会が「コンピュータ将棋プロジェクト終了宣言」をおこなった。この宣言は、将棋をするAI、つまり、コンピュータ将棋がトッププロ棋士に対してたくさん対局すると統計的に勝ち越す可能性が高いとした、事実上のAIの勝利宣言だ。

 将棋を対象としたAI研究はすでに50年近く研究されている分野だ。急成長したのは、2000年以降である。 2012年に、(故)米長邦雄氏がコンピュータ将棋プログラム「ボンクラーズ」と対局した結果、男性棋士として初めてコンピュータに負けた。2013年には、プロ棋士5人とコンピュータが対戦しプロ棋士が1勝3敗1引き分けで負け越している。さらに2014年には1勝4敗と人間にとってはさらに厳しい結果となった。その流れで2015年に「コンピュータ将棋プロジェクト終了宣言」がなされた。将棋を対象とした人工知能研究の50年の中で、ここ10年の進化がお分かりになるだろう。  こうした囲碁やチェスでのAIの進化には、アルゴリズムの発展だけでなく、ハードウエアの進化が寄与している。

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