コミュニティを触媒としてイノベーションを“化学的”に再現させる
本連載を寄稿することになりましたViling Venture Partners(ビリングベンチャーパートナーズ)の栗島です。
当社は、2014年より主にアジア・ヨーロッパを中心に教育領域へ特化して国内外17社のシード期のスタートアップへ投資実行すると同時に、教育領域特化型のアクセラレータプログラムにて13社のスタートアップ支援を行ってきました。2015年12月からは、”10年間で2000億以上の新産業創出を行うスタートアップ”を生み出す共創型オープンコミュニティ「Supernova(スーパーノヴァ)」の企画・運営も行っています。
本連載では、私自身が現職以前に多数の「クリエイターコミュニティ」を運営・関与した際に、スタートアップが自然発生する機会に恵まれた経験と、投資家としてシード期のスタートアップへ関与し、何十名もの起業家/クリエイターと暮らした経験から生まれた、”Make Crazy(=狂ったアイデアに挑戦する)”なコミュニティ論を体系化してお伝えできればと思います。
そして、Make Crazyなスタートアップを創出するためのコミュニティ論の実践として、「スーパーノヴァ」での取り組みについても後の稿でお伝えできればと思います。そのスーパーノヴァが目指すのは「コミュニティを触媒としてイノベーションを“化学的”に再現させる」ことです。
なぜイノベーションにおいてコミュニティが重要なのでしょうか。そもそもコミュニティとは「人の集合体」であり、それだけでは烏合の衆に過ぎないと言われる方もいるかと思います。
そう、その通りです。
重要なのは、コミュニティにいる“一人ひとりの熱量”です。科学の大原則に「熱がなければ、化学反応は起きない」というものがありますが、高い熱量を持った人(分子)同士が出会うからこそ、化学反応が起きます。コミュニティの役割は「高い熱量を持った人同士の化学反応を加速させていく触媒」であり、イノベーションはこの化学反応の先に自然と生まれる事象であると考えます。また、高い熱量を持った人は夢中になって挑戦する「心に火がついた(没頭サイクル)状態」にあり、この状態にある人々を外界の強風や冷水から守る、もしくは弱まった火を再点火するのもコミュニティにとって不可欠な役割となります。
高濃度で優秀な才能が集まり互いを強烈に刺激し合うことで、化学反応の連鎖が生まれ、コミュニティが連続的なイノベーションを産み落とす“ホットスポット”へと変化します。
私自身がこう考えるようになった原点として、今回は「WHILL(ウィル)」というパーソナルモビリティを開発するスタートアップの成り立ちに、「コミュニティ」がどのような役割を果たしていたのかを、次項以降にて、紹介していきたいと思います。