優れた企業に共通する「ミッションの3要素」
ミッションは、バブル期において本業をおろそかにして土地や株式投機に走った日本企業を反面教師として、米国を中心とする企業で重視されるようになった概念でもあります。
マーケティングの大家であるコトラー教授によれば、優れたミッションをもつ企業は3つの共通するポイントがあるそうです。1つ目は「変化の約束」であり、消費者の生活を変えるための先駆者となること。2つ目は「感動的なストーリー」であり、そのミッションを軸として感動的なストーリーを描きつつその普及に努めること。3つ目は「消費者の関与」であり、ミッションを遂行するために消費者をも巻き込んでいくことです(図10)。ある意味では理想郷のようなものですが、このように元気な企業が日本にも多く現れることを期待したいと思います。
行動規範がミッションを支える
最後に、ミッションのサブ要素である「行動規範」について触れてみたいと思います(図11)。英語では「Guiding Principles」と呼ばれることが多いのですが、直訳すると指導原則となってしまい、学校や塾の教育方針みたいな感じになってしまいますので、あえて行動規範としました。全ての事業体が行動規範をビジネス計画の要素として定義しているわけではないので、ミッションのサブ要素として位置付けております。
行動規範は、通常箇条書きで示されることが多く、日々の様々な意思決定をガイドするために使われる羅針盤のような役割を果たします。また、ミッションと行動規範は、戦略や戦術が変わっても不変であることが多いのが特徴です。もちろん、ミッションと行動規範も時代の流れや環境の変化によって変わることはあります。
スターバックスの行動規範を見てみましょう(図12)。「人々の心を豊かで活力のあるものにするために-ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」というミッション・ステートメントから始まり、6つの行動規範(日本語では原則となっている)が記述されています。たとえば、私たちと顧客という行動規範については、「心から接すれば、ほんの一瞬であってもお客様とつながり、笑顔を交わし、感動経験をもたらすことができます。完璧なコーヒーの提供はもちろん、それ以上に人と人とのつながりを大切にします」というコメントが付されています。
このほかにも、ウォルマートの創始者であるサム・ウォルトン氏によって実践された100の原則(その名もずばりThe Principle)も有名です。
(参考資料)