顧客リレーションシップ戦略は、特定の相手に有効
顧客との親密性
顧客との親密性を追求する企業は、「ターゲット顧客との間で、まるで良い隣人のような長期的な関係を築こうとする。幅広い市場をターゲットとするのではなく、特定の顧客のニーズに応え、問題を解決しようとする。プロダクトやサービスを組み合わせてトータルプランを提供したり、顧客に合わせてカスタマイズしたりする。」ということになります。フォーシーズンズホテル、IBM、ホームデポなどが代表的な企業のようです。ザッポスは、顧客との親密性に焦点を当てる新しいタイプの企業といえるかもしれません(ザッポスは自分達を「たまたま靴を売っているサービス企業」と説明しています)。この戦略を追求する企業は、ビジネスモデルの顧客インターフェースにまず焦点を当て、残りの3つの柱をそれにフィットさせるように設計していきます(図10)。
この戦略を追求する企業の価値提案の大きな特徴の1つは、プロダクトやサービスそのものというよりはソリューションの提供にあります。つまり顧客の抱えている固有の課題や問題に対して、プロダクトやサービスを組合せたり、カスタマイズしたりすることが必要となります。したがって、ターゲット顧客は顧客特性に応じて綿密にセグメント化されている必要があります。チャネルに関しては、当然ながら直接的かつ人的なコンタクトが中心となります。パーソナライズ化されたWebチャネルもそれを補完するでしょう。顧客リレーションシップに関しては、短期的な取引ではなく、長期的なリレーションシップの構築と維持が重要なテーマとなります。
オペレーション基盤に関していえば、効率性重視の機械的なプロセスというよりも、顧客を中心に据えた柔軟性のあるプロセス、いわゆるバリューショップ(課題の発見→解決)型となるケースが多いでしょう。
収益モデルは、継続的なリレーションシップ構築を考慮したプライシング体系が重要です。この戦略のゴールの1つは、市場シェアを増やすのではなく、顧客の財布シェアを増やすことです。コスト構造は、顧客獲得とその維持コストが多くなる傾向にあります(図11)。