「微信」(ウェイシン)が需要を喚起している
中土井 日本では官民一体で、今後も訪日観光客を招致し、現在の2000万人から4000万人に増やしたいという計画がある一方で、中国からの爆買いは一段落しブームは終わったという見方もあります。インバウンドという言葉が一般化し、ニュース映像などで表面的なイメージは広まっているのですが、実態のところはどうなっていて、これからどんな戦略を立てて行けば良いのかをデータの側から考えていきたいと思います。
岡崎 今回はデータ分析を主軸としてお話になると思いますが、その前に実体験のインサイトから話をしましょう。
現状、インバウンド消費がピークを過ぎたのではないか言われています。確かに超円安はもう済みましたし、今年(2016年)4月、中国で旅行客が持ち帰る商品への関税が高くなりました。たとえば腕時計は30%から60%、お酒と化粧品は50%から60%に。
さらに3年前は皆さん、ウォシュレットとか炊飯器を買っていたわけですが、需要が一巡し、買われる商品がどんどん変わっています。
化粧品で言うと、コーセーの「雪肌精」などは割と安定して売れているのですが、2年前であれば、アルビオン化粧品のスキンコンディショナーが爆買いの対象でした。今人気なのは、ポーラの「美白丸」や、資生堂の「クレ・ド・ポー ボーテ」という高級ラインです。ポーラでは、「THREE」(スリー)というプレミアムラインへというように、上級にシフトも来ています。
その変化の要因というのは、中国のスマホアプリ「微信」(ウェイシン)にあります。中国人のスマホ率は90%以上で、皆「微信」を使っています。そのポータルから入り、ニュース、オンラインショッピング、チャット、あるいはタクシーの配車から支払いまで、すべて「微信」経由です。「銀聯カード」はありますが、中国人はもう、クレジットカード、デビットカードを通り越して、微信やアリババのスマホ決済システムに移行しています。よく「微信」は中国版のLINEとかFacebookとか言われるのですが、それは違うなという気がしています。
今、中国人が一番信用するのは、「微信」上の友人、あるいはその友人からの情報です。中国の人は日本人以上に転送、転載が大好で、バンバン転送して、「微信」で転送されてくる情報はかなり信じますね。「微信」から得られる、自分たちが信じている直接情報を上手く使い、人気があって買いたいものを事前に決めて、出金リストを作って訪日してくるというわけです。