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「ポスト爆買い」時代のインバウンドビジネスをデータから考える

対談:中土井利行氏(ウイングアーク 1st)☓岡崎茂生氏(フロンテッジ)【前編】

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中国観光客への固定観念を捨てよ

中土井 そのアプローチの仕方ですが、これまで数多くの日本企業が中国の市場に挑んでいるものの、中々思うように行っていないと聞いています。その要因についてはどのようにお考えでしょうか。

岡崎 僕の経験から言うと、日本企業で、ちゃんと中国人の動向やトレンド、彼らの本当のニーズを把握しているところは少ないと思います。
たとえば中国に進出した企業が中国人を雇用し、彼らを通して情報を得ていますが、そこにはフィルターがあるのです。やはり日本人の意思決定を出来る人たちが現場に入って現地の言葉を学び、現場で一緒にビジネスをしながらお客様の声を聞く必要があります。
 そして生の情報を取り、見えてくるものに基づいて「じゃあ、これで行こう」というビジョン、「意図」をもってデータを使う。「意図」がなくてデータだけを見ていても、中々戦略にはなりません。

 僕が2006年、北京電通に行った時、テンセント社が「QQ」というPCベースのチャットアプリで大成功していて、中国のPCのほとんどに入っていました。
その「QQ」のスマホ版が「微信」であり、そのブランドへの信頼があったからこそ、5億人がすぐにインストールして使い始めたというわけです。

 それで今、その位置情報で使われているのがタクシー配車アプリなのですが、呼べるタクシーが何種類もあるのです。たとえば自分が今、Aという場所にいてBに行きたい、と音声でもいいから入れると、そばにいるタクシーがリストアップされます。
リストにはタクシーだけでなく、一般の人たちが空き時間にアルバイトしている、いわゆる白タクも並びます。それもまた2種類あって、「専車」はBMWの5シリーズとかアウディとか結構良い車が来ます。値段も少し高いです。もう一つの「快車」は小さい車で少し安い。さらに「順風」という、同じ方向に行く車を見つけて相乗りするというのもあります。

 日本は完全に周回遅れですね。やはり従来の規制をなかなか変えられない。一方で中国政府は、これまでの製造業中心の産業政策からサービス業中心に転換しようとしています。そうなると、こうしたタクシー配車みたいなビジネスは、まさに中国で発展させるべきサービスだと判断して、自由にやらせているのです。当然、タクシー業界からの反発はありますよ。そこは上手くテンセント社が、全国のタクシードライバー600万人を囲い込んで、彼らを味方に付けてやっているのです。

 その他にも、たとえば決済サービス。テンセントもアリババも、銀行口座に紐付けるだけではなく、口座からお金を移すと高い利息が付くようにしている。要するに銀行業に入ってしまっているのです。
このようなことは、日本には銀行法があって、絶対に出来ない。
それを中国政府はやらせている。やはり既存の銀行ビジネスよりも新しい、決済サービスを含む、新しい金融サービスを発展させたい、という風に明らかに判断している。

 ということで、日本が止まっている間に、世界はどんどん2周も3周も先を行っている、というのが現実です。で、そういう国からやって来る人たちなのですよ。中国の旅行者というのは。たしかに田舎の人も一杯いるけれども、彼らの消費ニーズと情報のレベルをあなどってはいけない。

ブランドと「本物証明」が必要

中土井 爆買いについて一般的に持たれているイメージと、リアルの現場のインサイトはかなり違っているということでしょうか。

岡崎 そうですね。爆買いニーズを次のビジネスにつなぐイメージがない。
戦略的にインバウンド需要を創出するとか、インバウンドで買ってくれたお客様に帰国後も買ってもらうという、インバウンドとアウトバウンドの統合マーケティングをしている企業は、僕の知る限りありません。これはかなり間抜けな状態と言わざるを得ません。
 でも日本では買うのに、中国に戻って同じ商品を継続で買わないのかというと、やはり理由があります。一つは、日本で買えば絶対本物だけど、中国で売っているのは偽物かもしれない。これはかなり根強くあります。値段も輸送コストと関税、マーケティングコストがかかり、日本の1.8倍とか2倍になってしまう。
もう一つは売り場がない。日本では買えても中国では買えないので、結局オンラインショッピングで買うしかない。でもそこで売っているのは偽物かもしれない。またそこに戻ってしまう。
 だから本物証明をちゃんとつけてあげて、中国の販路もリアル店舗とオンラインをきちんと作る。なおかつ「なぜ日本のものがいいのか」について、ブランドメッセージを送るのです。

 後編に続く

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BizZine編集部(ビズジンヘンシュウブ)

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