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シリコンバレーに招かれる僧侶・藤田一照氏が語る、「禅とデザインとマインドフルネス」の共通項

【特別対談】藤田一照氏 ✕ 入山章栄氏 ✕ 佐宗邦威氏:前編

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ビジネスでも注目を集める、マインドフルネスとしての“禅”

入山(早稲田大学ビジネススクール准教授):
 今、日本の様々な分野で「イノベーション」「クリエイティビティ」について頻繁に語られています。たとえば、ビジネスでは技術や組織などが注目されますし、都市論もあります。人間の心身や脳にフォーカスする人もいます。私や佐宗君は、こういった多様なレイヤーで議論されているものは、実は本質的には似たことを捉えているのではないかと考えています。言葉として違っているだけで、それらを整理して1本の背骨を作ることで本質が見えてくるのではないかというのが、我々の課題感なんです。

藤田:
 なるほど、連載を拝見しましたが、登場しているのはそうそうたる方々ばかりですね。どのお話も大変面白かったです。

佐宗:(biotope 代表取締役社長)
 はい、これまでポジティブ心理学の権威チクセントミハイ教授、日立研究所の矢野氏、IDEOのトム・ケリー氏、メタップス創業者の佐藤氏、そしてヤフーCSOの安宅氏と、皆さんとても興味深いお話をしてくださいました。イノベーションを生み出すクリエイティビティと人の身体性や、心の在り方について触れる方が多かったのが印象的です。

入山:
 佐宗君が言うように、特に「心の在り方」は、皆さんとてもご興味をお持ちでした。例えば米国西海岸を中心に、心の鍛錬や安寧(あんねい)のために、禅や瞑想といった東洋的な手法が注目されていることは、多くの方が関心を寄せていました。私自身も3年前まで研究者として米国におりまして、専門分野の経営学でも「マインドフルネス」への関心が高まっていることを実感しています。

佐宗:
 僕も心への興味・関心を持つようになったのは、自分の体験がきっかけです。20代の頃、外資系のメーカーで論理的な思考法にどっぷり浸るうちに、どこか違和感を抱くようになり、絵やデザイン、アート、演劇など「答えがないもの」をやることでバランスをとろうとしていたんです。そのなかで野口整体*に出会い、心における身体性に興味を持つようになりました。その中で藤田さんの著書『アップデートする宗教』も読ませていただき、一方的に親近感を持っていました(笑)。

藤田:
 それはありがとうございます。光栄なことです。

佐宗:
 先日も米国西海岸のシンギュラリティ・ユニバーシティ**に行ったのですが、そこでも「人工知能の未来」「デザイン」と並んで、「マインドフルネス」が普通にプログラムとして組み込まれていたのには驚きました。

藤田:
 友人が参加したダボス会議でも、早朝にマインドフルネス瞑想のクラスがあってみんな熱心にやっていたそうですよ。オックスフォード大学名誉教授のマーク・ウィリアムズ博士がその時の講師だったそうですが、この秋に来日されて講演やワークショップをされるらしいですね。

入山・佐宗:
 へえ〜、ダボス会議でもですか。

佐宗:
 シンギュラリティ・ユニバーシティで私がとても印象的だったのは、「CEOなどのトップ層が積極的に参加していたこと」です。どちらかというと、テクノロジーや論理に傾倒しがちで、スピリチュアルなことは敬遠しそうな人たちが、禅を自然に受け入れている。そういう時代になったんだと驚きました。

藤田:
 その2つがもはや対立的なものとは考えられていないんでしょうね。スピリチュアリティ自体についての理解が変わってきているし、その捉え方が変化してきているのかもしれません。以前は、「聖」と「俗」というように対立するものとして考えられていました。2つの世界がそれぞれ別個に存在する「二世界モデル」だったわけです。たとえば、浄土教のキーワードである「厭離穢土 欣求浄土(おんりえど ごんぐじょうど)」などは、けがれたこの世俗を厭い離れ、聖なる極楽浄土を心から願い求めるという意味で、完全に2つの世界の対比が設定されています。キリスト教もそういう二世界モデルでできていますね。

藤田一照藤田一照氏

*野口整体
野口整体(のぐちせいたい)とは、昭和20年代に野口晴哉が提唱した整体法。活元運動、愉気法、体癖論から構成される。(引用元:Wikipedia)

**シンギュラリティ・ユニバーシティ
シンギュラリティ・ユニバーシティ(Singularity University、2008年 -)は、アメリカ合衆国シリコンバレーを拠点とする教育機関である。ユニバーシティ(大学)と名が付いているが、独自の校舎もなく学位の授与もない[1]。
教育、エネルギー、環境、食糧、世界的な保健、貧困、セキュリティ、水資源を人類の最も困難な課題(Global Grand Challenges)と定義し、加速的に発展する革新的技術を使ってこれらに積極的に取り組むことをミッションとしているベネフィット・コーポレーションである。また、革新的技術を開発する企業のための、新しいスタイルのスタートアップ·インキュベーターとしても各種活動を行っている。(引用元:Wikipedia)

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