ブリグジットやアメリカ大統領選後の今が、日本のクリエイティブの好機になる
ブリグジットとアメリカ大統領選が象徴するのは、グローバライゼーション(価値観や市場の一元化)という幻想が壊れつつあるという事実だ。そもそも、文化、宗教、経済などにおける無数の違いや格差があるなかで、世界の一部がリードする強制的包括には無理があったと思っている。そして、隠されながらも拡大していった格差や違和感が、SNSのようなツールにより、真のデモクラシーの実態が明るみに出るようになった。ブリグジットが起きた翌朝、ロンドンにあったのは「自分たちが知らない世界を顔面に突きつけられた戸惑い」だった。「はっ?え?だれが?」と。ある程度の収入を得ながらロンドンで生活をしている層からは見えていなかったイギリスがあったのか、というシニカルな発見である。
これまでのように一元化して考えることが難しい、より複雑で先が見えにくい社会の中で、新たな価値やビジョンを打ち出すことが出来るクリエイティブへの期待が高まっている。「イノベーション」と謳うと他人事に感じる方もいるので敢えて日常的な言葉に言い換えれば、既存の製品やサービスやビジネスモデルの枠を超えた新しい発想と言えるだろう。そのような発想が出来るクリエイティブが担う責任・チャンスは大きい。
日本人にとっても非常に前向きな変化でもあると思っている。「新しい発想(イノベーション)」の肝は「異なる価値観の統合」であり、つまり、多様性が欠かせない。対欧米比較をしたときに、衣食住、価値観、文化、コンテンツといった様々な面で非常にユニークな面をもつ日本人は、彼らにとって絶好の「異なる価値観」である。こうした理由で、先が見えない社会というのは、日本のクリエイティブにとって、まさに好機だと思うのである。
そして、そうした好機を生かすために、「生活文化力」の要素の一つに挙げる「感性への自負」が重要になる。