アレックス・オスターワルダー、来日セミナーレポート

ビジネスでは「外科医であり、建築家であり、科学者であれ」

[公開日]

[取材・構成] 有須 晶子 [編] BizZine編集部

[タグ] スタートアップ ビジネスモデル デザイン思考 競争戦略

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ネスプレッソのビジネスモデルキャンバス

アレックス・オスターワルダー(Alex Osterwalder)▲ 写真:講演時のアレックス・オスターワルダー氏(Alex Osterwalder)

 ネスプレッソは、コーヒー販売を抜本的に変えるビジネスモデルを構築し、1つのプロダクトラインから、54億ドルもの収入を得るようになりました。過去数年間に、スイス人が自宅で消費するコーヒーにかける金額を600・800%も増やすことに成功したのです。

 この例で、ビジネスモデルキャンバスを描いてみましょう。価値提案はコーヒーの提供、顧客セグメントは、一般世帯の消費者。小売店を通じて、ネスプレッソのエスプレッソマシンを売り始めました。マシンで使うコーヒーカプセルに関しては、マシンとは別のチャネルを作りました。最初はメールオーダー、次にネスプレッソドットコムというウェブサイト、今では直営店舗もあります。

 コーヒーカプセルの新しいチャネルを作ったことが、このビジネスモデルのポイントの1つでした。まず、最も広範囲なチャネルである小売店を通じてマシンを売り、顧客を囲い込みました。このマシンでは、ネスプレッソが特許で保護した純正のコーヒーカプセルしか使えないので、顧客は繰り返しカプセルを購入します。そこで、経常的な収益ストリームができたわけです。しかも、直販方式を導入したため、利幅も拡大できました。

 このようにして、ネスプレッソは、かつて取引ベースであった業界を恒常的に収益の上がるビジネスに変えることができたのです。

 キャンバスの左側も埋めていきましょう。コーヒー栽培者がパートナー、リソースはコーヒーカプセル。コーヒーカプセルを生産する設備を作ったので、そのためのコストがかかりました。主要活動としては、優れたマーケティング、ブランディングを行い、インフラ面では直販体制を敷くという新たな試みに挑戦しました。

 この例から学んでほしいのは、ネスプレッソの成功にとって、どのブロックも大切だったということです。テクノロジーだけでも製品だけでもありません。

 このキャンバスを使うときによくある間違いなのですが、ブロックの中に書かれていることそのものではなく、各ブロックがお互いにどう関わり合っているかという関係性のほうが重要です。ネスプレッソのビジネスモデルの強みは、全部のブロックがうまく組み合わさっていた点にあります。

ビジネスモデルキャンバスはコミュニケーションの共通言語

 ビジネスモデルキャンバスは、ビジュアルランゲージであり、視覚化された、効率的な共通言語として使えます。社内のコミュニケーションにおいてもこのツールを使えば、効率が格段に上がるはずです。

 このような共通言語というツールがない状態で会議をすると、皆さんも経験がおありかと思いますが、お互いの発言を理解できないという状態に陥ってしまいます。「絵」があると、どんな問題も明確になります。これは、何か新しいものを開発しようと話し合っているときには、特に重要なことです。

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