成功報酬型の求人サイトでテクノロジーを磨く
もともと競争の激しい求人系のWebサービスに参入したアトラエ。成果報酬型求人メディアというビジネスモデルが成功した要因について、アトラエ取締役の岡さんに話を聞くところから取材は始まった。
──もともとアトラエのビジネスって求人サービスから始まっていると思うんですが、ここってかなりの激戦区ですよね。
岡: いわゆる広告媒体なので、大手メディアがひしめいているんですが、成功報酬型っていうのは僕らが始めるまでほとんどなかったんですよね。
求人の広告の世界って、会社がお金を出せば、基本的にどんな会社でも大きな枠で掲載できますよね。逆に、どんなに良い会社でもベンチャー企業の場合、大手求人サービスを値切って掲載できたとしても、小さい枠しか購入できない。この仕組みでは採用予算のある会社にしか人が集まらない。だからお金が無くてもきちんと採用したい会社が自分たちの伝えたいことを100%伝えることが出来て、それに共感した人が応募し、採用が成功した段階でお金をもらうという形にしたのが「Green」というわけです。名前の由来も”青信号(Green light)”で、世の中の転職を考える方々にとって、それぞれの青信号を見つけられるプラットフォームを作りたいという思いで名付けました。掲載料を課さないことで、良い会社が良い人を採用できるという世界観で、いろんな会社を説得して回ったんです。当然最初は、無料でコンテンツを作らなければいけないのでキャッシュフローは大変でした。まず125社ぐらいの記事コンテンツを自分たちでつくるところからスタートしたんです。
──その成功報酬モデルの転職サイトのノウハウが「yenta」に生かされたというわけですね。
岡 : 今では成功報酬型の求人サイトはたくさん出てきましたけど、実は成功報酬のシステムをつくるのはけっこう難しいみたいで、どこもそれなりに苦戦していると思います。僕らも長年やってきて、転職者と求人をマッチングさせるところで相当苦労してきました。
──たとえばどういうところが難しいのでしょうか?
岡: Amazonみたいに、商品と買いたい人を結びつけることはそれほど難しくありません。あなたがある本を買いたいという意思決定さえすれば、本は「あなたには買われたくない」とは言わないので、変数はひとつです。でも採用とか、恋愛もそうですけど、片方の人が入社したいとか付き合いたいといっても相手の人がダメって言うことがある。そうすると変数が2つになり、マッチングは2乗分難しくなる。つまり結構なデータ量がないと精度が高まらない。僕らはこのマッチングの精度にこだわっていて、ずっと研究し続けているんです。
Greenは成功報酬型というモデルであるが故に、約10年前から全ての応募〜採用までの選考プロセスデータを持っています。どんな職歴を持つ方が、どんな企業のどの求人に応募して、どの選考プロセスまで進んだのか、どちらが断ったのかなどのプロセスの全てを把握しているということです。それを適切に分析して未来の採用に繋げる技術やUXがGreenの強みでもあります。
yentaの立ち上がりも、元々企業に合った人材を自動的に発掘する、「TalentBase」というサービスがあって、その人材解析データベースの上に乗せる形で開発しました。TalentBaseは、人と会社の相性を、Facebook、ツイッター、GitHub、Qiitaなどのソーシャルデータから解析するというものです。
まず課題としてあったのは、日本の場合、ビジネスパーソンのプロフィールを持つオープンなプラットフォームがない。みんなが自分のプロフィールデータを持っているわけではないし、リンクトインみたいなサービスが定着していない。もうひとつは、個人の仕事の経験や知恵、ノウハウのようなものも、箱の中に閉じ込められていることが多い。こういうものが、会社の枠を超えて流通していかないと、雇用や知性の流動化って難しいですよね。