論拠の見える化、初期からの動くプロトタイプ制作で品質の高い製品を開発
「継続的プロトタイピング」の事例として、工藤氏はゆめみが手掛けたふたつのプロジェクトを紹介した。
ひとつは、東芝ライテックとのHEMS連携アプリの開発プロジェクトだ。HEMSとは、Home Energy Management Systemの略で、本プロジェクトではスマート家電と連携し、太陽光発電の状況をモニタリングできるAndroidタブレット向けのアプリを開発した。携わったのは東芝側の担当者2名と、ゆめみのサービスプランナー、UIデザイナー、アプリのエンジニアの3名という、非常にコンパクトな体制だ。
この事例のポイントは、最初にペルソナを作成してターゲットユーザー像を明確にし、そのユーザーが普段どんな生活をし、新しい製品が生活に入ってきた時にどのような態度変容があるかといったカスタマージャーニーマップを描く――、という手順で検討のプロセスを可視化していることだ。
このプロセスにより、関係者の感覚を一致させることができるだけでなく、その後のプロセスでベースとなる「論拠」を確立することができる。例えば、アプリのUIを検討する際、これまで存在した無機質な家電モニタとは異なる、インテリアとしてずっと見続けてもらえるもの、という軸をぶらさず、実際に使う場面を想定しながらUIデザインを進めていくことができた。
また、最終的にAndroidアプリを開発することは決まっていたため、UIデザインの段階から実際に動くアプリの形でプロトタイプを作った。これにより、関係者は完成後のイメージにズレが起きにくくなるということの他に、プロジェクトの初期の段階からアプリのエンジニアが参加し、ユーザーに見える部分の動きをどうするかといった課題を早めに解決しておけるという点も利点になる。なぜなら、エンジニアは通信やセキュリティなど、目には見えないが重要な部分の開発に十分に注力し、品質の高い製品を開発することができるからだ。