アイデアを実現させ、非連続なストーリーをどう語るか
価値観を革新したり、ユーザーの日常行動のパターンを変えたりするイノベーションを起こすために、インダストリアル・デザイナーはどう行動すればいいだろうか。
田村氏は、「インダストリアル・デザイナーがプロジェクトをデザインする必要がある」と指摘。かつての闇研究のような「闇デザインプロジェクト」が、いまこそ企業には必要なのではという。
今の時代はネット環境や3Dプリンタなどのツール、海外への部品の受発注などの登場によって、社内リソースに頼らなくてももの作りができる。さらにいえば企業の中じゃないほうが動きやすい。しかし、これは企業にとっては一長一短ある。企業の外のほうがやりやすいという状況を経営者は理解し、企業における成長とイノベーションを起こすためには何をすべきかを考えなければいけないという。
“従来の事業計画では、事業の連続性に偏ってしまうが、それではイノベーションは起こせない。企業はもっと危機感を持たなければいけない。事業計画にどのようにイノベーションのポートフォリオを組み込むか。連続性のある事業をやりつつ、非連続性を含んだ事業を同時に生み出していく。そのために、企業の組織をどうデザインし、マネジメントしていくかを考えることが重要だ”(田村氏)
イノベーションによって生み出されうる新しい行動や習慣は、新しいがゆえに社内外の人々にどのように伝え、表現するかが求められる。そうした意味で、伝える技術をもつデザイナーは大きな存在だと田村氏は語る。
“アイデアの良し悪しではなく、アイデアをどう実現させ、社会にどうインパクトを与えるかから考える。ビッグアイデアは最初からビッグではなく、成功して初めてビッグアイデアとなる。そのためには非連続な変化のストーリーが大切で、それを語ることは、イノベーターの重要な役割。そして、語る力をデザイナーはもっている。それを意識することで、デザイナーがイノベーションを起こす大きな存在となれる(田村氏)
インダストリアル・デザイナーは、非連続な未来のストーリーの語り手であるべきだ、と語る田村氏。企業内でイノベーションを創発し、社会において大きなインパクトを生み出すためにどうしていくべきか。企業のあり方、組織のあり方、そしてデザイナーとしてのマインドセットが問われている時代とも言えるだろう。
● イベント概要 ●
イベント名:IDイノベーション・連続セミナー/第2回:イノベーションをつくる
- 主催:公益社団法人日本インダストリアルデザイナー協会/JIDA
- 講師:田村 大 氏(リ・パブリック共同代表 東京大学i.school共同創設者エグゼクティブ・フェロー)
- モデレーター:安西洋之(モバイルクルーズ株式会社代表取締役)