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「イノベーションのジレンマ」の大誤解

「イノベーションの解」を“知らないフリ”する、日本企業の“合理的な認識の歪み”とは?

「イノベーションのジレンマ」の大誤解:第5回

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 今までの記事4回分では、日本企業からイノベーションが起きにくい状況を、課題として解説しました。今回は最後の課題提起にしたいと思います。次回から提起してきた課題に対するソリューションに移る予定ですが、最後の課題提起が状況を複雑にしているのです。「課題を認識しているのに、認識しようとしない or 正しく認識しようとしない」というのが今回の中心論点です。世界のイノベーションは先行事例により、実業でも、アカデミアでも、「既存企業からはイノベーションが起きにくい」事実と、それに対する打ち手が検証され、示されています。我々はそれらを容易に知ることができます。知ってもなお、解決しないのはなぜか、を掘り下げていきたいと思います。

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すでに提示されている「成功する逸脱的イノベーション」5つの法則とは?

 前回は、新規事業が起きにくい典型的な社内の構造について書きました。ここまでの連載を通じて「できない理由」を羅列していると思われる読者もいるかもしれません。まずは課題を明確化したいというのが筆者の意図であり、課題が明確であれば正確な打ち手も特定でき、効果的な取組ができると思い、前回までの4本分の記事を執筆しました。多くの方に記事をお読みいただき、実際に記事をリリースした後に、直接お聞きしたご意見、実際の企業支援の現場における実体験を統合すると、イノベーションにまつわる課題が、まだまだ多くの企業で誤解されていると、確信した次第です。

 結論を先にいえば、「持続的イノベーション」は既存組織で取り組むことが可能ですが、「逸脱的イノベーション」はスピンオフ・スピンアウト等を活用して、“本当に事業創造につながる方法”で行う必要があります。“自社都合で動く世界を発明すること”に躍起にならずに、次の日本の経済発展を本気で目指すべき時期が来ている、と感じるからです。

スピンイン、スピンオフ、スピンアウトの差異

 さて、そのような思いから今回は、クリステンセン教授が『イノベーションのジレンマ*1』で、既に提示している「成功した逸脱的イノベーションの5つの特徴」を取り上げていきます。

1:新規事業のためだけに設定した顧客と向き合える組織にする

逸脱的技術を開発し、商品化するプロジェクトを、それを必要とする顧客を持つ組織に組み込んだ。経営者が逸脱的イノベーションを「適切な」顧客に結びつけると、顧客の需要により、イノベーションに必要な資源が集まる可能性が高くなる。

2:小さい規模にも前向きになれる組織(人材)に任せる

逸脱的技術を開発するプロジェクトを、小さな機会や小さな勝利にも前向きになれる小さな組織に任せた。

3:一発必中を狙わず、小さな失敗を受け入れ、数多く、試行錯誤する

逸脱的技術の市場を探る過程で、失敗を早い段階にわずかな犠牲でとどめるよう計画を立てた。市場は試行錯誤の繰り返しのなか形成されていくものだと知っていた。

4:主流組織の価値基準や意思決定プロセスから切り離し、出島を創る

逸脱的技術に取り組むために、主流組織の資源の一部は利用するが、主流組織のプロセスや価値基準は利用しないように注意した。組織のなかに、逸脱的技術に適した価値基準やコスト構造を持つ違ったやり方を作り出した。

5:既存市場ではなく、新しい価値を評価してくれる市場を開拓する

逸脱的技術を商品化する際は、逸脱的製品を主流市場の持続的技術として売り出すのではなく、逸脱的製品の特徴が評価される新しい市場を見つけるか、開拓した。

 クリステンセン教授は上記の5つの「イノベーションへの解」の方向性を指し示しながらも、既存企業は、その方向性に従えない構造的な理由があることも指摘しており、ほとんどの業界で同じような状況だというのです。

逸脱的技術は多様な特質を持つ業界の力学を変化させることがあるが、そのような技術が現れたときに企業の成否を分ける要因は、“どの業界でも同じ”であることがわかった。

 上記の通り、クリステンセン教授が「逸脱的イノベーション創出」のための「拠り所」を示しており、多くの既存企業の経営者、新規事業担当者は、上記を理解し、納得していると思われます。では、日本企業におけるイノベーションの状況は、なぜ変わらないのでしょうか。

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逸脱的イノベーション創出の拠り所に対する「3つの認識」

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この記事の著者

鈴木 規文(スズキ ノリフミ)

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合田 ジョージ(ゴウダ ジョージ)

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村上 恭一(ムラカミ キョウイチ)

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