eBay、Google、Mozillaなどを経て、シンギュラリティ大学のバイスプレジデントに
佐宗(biotope 代表取締役社長):
いきなり個人的な話で恐縮なのですが、実は私は昨年の5月にシンギュラリティ大学のプログラムに参加してきたんです。*1
パスカル(Singularity University Startup solution Vice President):
おお!それはうれしいですね。いかがでしたか。
佐宗:
極めて刺激的な体験でした。テクノロジー変化のスピードが早くなりモノカネの流れのインターネット化が起こる中、全てのビジネスが急速にネットワーク的な法則が適用される「エクスポネンシャル(指数関数的)」になっていることを実感しました。今後は、指数関数的な成長を目指す組織が、知の創造のプラットフォームを目指して、オープンで自律的なネットワークとなっていくであろう、ということが想像できました。
そんな背景もあり、今日、シンギュラリティ大学でインキュベーションプログラムを実際にリードしているパスカルさんにお会いできて、大変興奮しております(笑)。ぜひとも、飛躍的に成長する組織とはどのようなものかという視点から、いろいろとお話を聞かせてください。
パスカル:
ぜひ、よろしくお願い致します。
入山(早稲田大学ビジネススクール准教授):
シンギュラリティ大学でのご活躍もすばらしいのですが、それ以前のご経歴もすごくユニークですよね。eBayで事業開発、そしてMozilla、Googleはインキュベーションに携わられていたというご経験にも大変興味があります。そもそも、学生時代は何を専攻されていたのですか。
パスカル:
経済学と心理学です。私はドイツ出身で、現地の大学院で修士号修得のために学んでいたのですが、1990年代後半に欧州にもドットコムブームがやってきまして。私もご多分に漏れず、会社を立ち上げたのです(笑)。当時はちょっとしたバブルで、学生が書いた2ページの事業計画書でも、250万ドルを調達できたんですよ。
入山:
すごい時代を経験されましたね。
パスカル:
はい。3年ほどその会社を経営し、学業を終える頃には売却して2001年にeBayに入社しました。当時のeBayは急成長中で、私は欧州で最初にeBayに雇用された1人なんです。eBayでは、事業開発を担当しました。
入山:
学生時代からインキュベーションに興味を持たれていたのですね。
パスカル:
強く意識し始めたのは、その後にFirefoxを手がけているMozillaのイノベーション部門に誘われ、渡米した頃でしょうか。ちょうどFirefox 2の開発時期だったのですが、すごい勢いでオープンソース化に取り組んでいたので、オープンイノベーションについていろいろ学ぶことになりました。その後、Mozillaを離れてGoogleで慈善的投資に関わり、3年ほど前にシンギュラリティ大学(Singularity University)に来ました。
入山:
Googleからシンギュラリティ大学というのも、大きなキャリア・チェンジですよね。移られたきっかけは、どのようなものだったのですか?
パスカル:
実は、Googleには90日しかいなかったのです(笑)。
佐宗:
え!! 3ヶ月でGoogleを辞めたのですか!
パスカル:
Googleは素晴らしい会社ですが、規模が大きいがために官僚的なところがあり、それが自分には合いませんでした。決断は早い方なので、これはもう合わないと思い、早めに見切りをつけたわけです。
入山:
パスカルさんから見るとGoogleですら、官僚的に見えてしまうのですね(笑)。
パスカル:
シンギュラリティ大学では佐宗さんにも受講いただいた内容と同じ「エクスポネンシャル入門」の他に、「起業家論」「オープンイノベーション」を教えています。他にもインキュベーター/アクセラレータープログラム、ベンチャーファンドなど、大学グループ内の起業家に関わるあらゆることを担当しています。
佐宗:
シンギュラリティ大学に入られてからのパスカルさんの活躍は言うまでもないですよね。アメリカではミレニアル世代の起業家にとってのオピニオンリーダー的な存在になってらっしゃいますよね。現在から未来に加速度的に実現していく「エクスポネンシャル(指数関数的)な成長」について、何よりも「達成不可能にも思える野心的な目標を掲げること」が不可欠と力説されています。この、MTP(Massive Transformative Purpse:野心的な変革目標)について教えていただけますか?
パスカル:
もちろんです。MTPは、シンギュラリティ大学において何よりも重要な概念ですから。まずはそこからお話ししていきましょう。