文化を継承するために経済を担保する「地域文化商社」
内田(株式会社リ・パブリック 共同代表):
現在、私たちは、次代のデザイナーのための学びと実践の場・XSCHOOL( http://makef.jp/xschool/ )を企画運営しています。XSCHOOL立ち上げの背景のひとつに、地域文化と経済の新たな循環系をつくってゆきたい、という思いがあります。
白水さん率いる「うなぎの寝床」は、まさに、事業を通じて地域文化と経済の循環系をつくられているのではないかと思い拝見していました。どのようなことを考えながら取り組んでいらっしゃるのか、今日は色々とお話を伺いたいと思います。
まずは「うなぎの寝床」の概要を教えてください。
白水(株式会社うなぎの寝床代表取締役):
うなぎの寝床は、筑後地方の物を紹介、発信するためのアンテナショップとして、2012年7月に福岡県八女市でオープンしました。僕と友人の春口、妻の3人で立ち上げ、2015年に株式会社化しました。
うちは久留米絣(くるめかすり)のもんぺを中心に、お店をやっているイメージが結構強いと思うんですけど、実はいろんなことをやっていて、店舗・卸・通販・イベントの4つが大きな売上になっています。
というのも、もともとイメージしていた取り組みが、作り手と使い手のつなぎ役みたいなものだったんですよね。なので、お店をやりたいとか商業をやりたいというのはあくまで後からついてきた手段です。
それで改めて、会社のことを整理し直しているんですが、いまは「地域文化商社」という形態をとろうと考えています。
内田:
「地域文化商社」というのは?
白水:
伝統的な産業が続いていないのは、経済的な理由がほとんどなんです。文化を担保するためには、経済を担保しないといけないという問題がある。そういう意味で商社的な機能も担おうということです。
内田:
地域の文化を担保するための商社が、地域文化商社なんですね。
白水:
作り手さんたちって、意外と経済主義なんです。僕らがお店を始めるとき、作り手さんに感謝されるかなと正直思っていたんですけど、「頑張って」と言われることもあれば、同情されることもあって。経済の総量が増えないとそもそも相手にしてもらえないと、わりとすぐに気づきました(笑)。
売れる総量が上がってきたら、みんな協力してくれる。当たり前のことなんですが、お店をやって初めてわかりましたね。
もんぺ事業でいうと、在庫はすべてうちが抱える形でやっていて、いまは年間一万着ほど売っています。会社全体の売上高は2016年度で1億800万、今期は1億5000万ほどを見込んでいます。
ただし、お店や通販などの商業機能を担っているのは、あくまでも地域文化を担保するための手段の一つ。うちはビジョンを「地域文化の継承のために、地域資源を顕在化させ、その価値を、現代社会に問い続ける」としていて、一番重要なのは、地域文化の継承を助けるシステムをつくることだと考えています。