「行動観察が人材育成に有効」とは、どういう意味なのか?
まず1つ目は「観察のスキルや体系」を身につけることができること。先入観なく事実と向き合い、多様な視点から気づきを得ることは、できるようでいてなかなか難しい。さらに「当たり前」という常識にとらわれ、見えるものが見えなくなっていることも少なくない。行動観察という手法を取り入れることで、フラットな観察眼を養うというわけだ。
2つ目は「現場の事実」を起点に考えられるようになること。机上の空論ではなく、現場の事実からリアリティのあるアプローチが可能になる。
そして3つ目は「類型的な整理・分析手法」を体得することができること。単独の気づきだけでなく、複数の気づきの関係を俯瞰して観ることができるようになる。さらには気づきの相互関係を理解することによって、本質的なインサイトが得られるというのだ。
「自身も気づかない潜在意識」を観察し、見える化する「行動観察」
行動観察の人材育成への活用によって「目的=得られるもの」をご理解いただいたところで、まずはメソッドとしての行動観察について紹介しておこう。
人の行動はすべて明確な意志のもと行われているとは限らない。自分で言葉にできる「意識的な部分」の下には、大きな「無意識」がある。意識的な部分であればインタビューなどの手法が有効だが、潜在的な部分はモデレーターが刺激して引き出されるものもあれば、自分でも気づいておらず言葉にできないものもある。この「潜在している部分」が行動観察のターゲットだ。つまり、無意識の行動を観察・分析することで潜在的なニーズやリスク、スキルなどを可視化するというわけである。
越野氏は「オフィスでの掃除」や「コンビニでの購買行動」などを例に挙げ、一見、当たり前に見えるものの中にも潜在ニーズが現れていると語る。それらは必ずしも正しいとは限らない。しかし、観察することで意識に現れていなかった事実に気づき、インタビューやその他さまざまな手法によって得られた結果と合わせて解釈を行う力が、マーケティングスキルとして有効と考えられているというわけだ。