人間の“バイアス”は「的確な行動観察」の邪魔をする
的確な行動観察のために重要なこと。それは「Inspection=正しい行動かどうかチェックすること」ではなく、「Observation=ありのままの事実を観察すること」である。それができてはじめて、新たな気付きがあり、優れた点や改善点などを見いだせるというわけだ。越野氏は「このObservationを行い、たくさんの気づきを得るためには、一定の体系やスキルが必要。そしてそれらが人材育成に大きく役立つのではないかと考えている」と語る。
ここで越野氏は「道を説明している相手が入れ替わる」「電話が鳴り、それに他の人が出る」などの映像を流した。いずれも前後で人が変わっているのに気づかない。見ているようで見ていない認知していないという特性、一定の「コンテキスト」に関連性を持たせてしまう特性など、行動観察を阻害する「人間の特性」が如実に示されたわけである。
越野氏は他にも行動観察を阻害する例として、「1点に集中すると周りが見えなくなる」「仮説が強すぎて、自分の仮説を証明するものしか見ないようになる」「価値観が強すぎて、それに反する行動を『変わった人』として除外する」などを紹介。
そして、これらのバイアスを補うものとして「仮説ではなく『どのようにしているか』という素直な問いをもって観る」「子どもの目線などさまざまな立場や視点から観る」「初めて見るようなつもりで先入観を入れないように意識して観る」など、多様な“観方のスキル”が示された。
さらに越野氏は、「その場で解釈しないことなども重要。最も面倒なのは『俺が一番知っている』というケース。行動観察の姿勢として、最も大切なのが事実に対する謙虚さ」と語った。
他にも行動観察のための体系の1つとして人(Human)と機械(Machine)の接触面(Interface)の「身体的・頭脳的・時間的・環境的・運用的」の5つの側面からの観察を行う「HMIの5側面」による観察法や、結果分析の流れなどが紹介された。