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クリステンセン「ジョブ理論」入門

ビジネスモデルとデータ分析の呪縛─ なぜジョブを中心に考えることができないのか

第十回

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人は見たいものを見る

 顧客にジョブがあるように、製品を提供する企業にもジョブがある。「もっと売れるミルクシェイクをつくりたい」というジョブを持つ人は、どの味のミルクシェイクが売れているか、という情報には敏感になるが、バナナの売上情報には関心がない。あるいは、ミルクシェイクを買った人が通勤途中なのか、わざわざ店に買いに来たのかについても興味がない。通勤のついでに(味とは関係なく)暇つぶしのために買ったのだというインタビュー結果も受け入れがたいだろう。自信満々で商品を開発していればなおさらだ。「味を求めてわざわざ買いに来た」という声は深く印象に残り、「良いお客さん」として認識されるのとは好対照だ。クリステンセン氏が『イノベーションのジレンマ』で語った、「声の大きい」顧客のニーズに経営が引っ張られることにも近い現象だ。実際に、メーカーで顧客インタビューを行うと、「とはいえ、味は大事ですよね?」といった自社にとって希望的な確証を求める質問を投げてしまう。そう聞かれた顧客は「ま、まぁ」とリップサービスで応じることになり、議事録にばっちり残る。まさに確証データの誤謬である。

 ジョブ理論の話をすると、一部の経営者は「顧客接点が多い営業に教えよう!」と早とちりをする。営業マンは確かに顧客に会うことに慣れているが、それは「売りたい」というジョブがあるためだ。安直に営業担当者にジョブの把握を依頼するのは、販売につながりそうにない情報がまったく拾えなかったり、軽視されたりするために失敗する。ジョブ探索そのものを「仕事(ジョブ)」として認識してもらわないと、売りたいものを裏づけるような情報しか得られずに終わるケースが多い。ジョブは商品の存在とは無関係に、顧客がやりたいことだということを忘れずに、冷静に顧客の置かれた状況をとらえたい。

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津田 真吾(ツダ シンゴ)

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