「顧客のジョブ」は“作るもの”か、“発見するもの”か
荻野:まずは私も含めて読者の方にも気になっていることをうかがいたいと思います。それはジョブとは「発見するもの」なのか、「作るもの」なのか、ということです。
マーケティングの基本に、「問題提起を行い、解決意欲を抱かせて、その特性・USP(商品独自のスペック)・ブランドへつなげる」というフローがあります。その中で私が一番重視しているのは、問題提起のところです。問題提起はジョブを作ることだと考えていたのですが、ジョブ理論では「ジョブは作れない」とあります。
津田:ジョブを「見つける・作る」は“言葉のあや”に近いですね。たとえば閑散期の2、3月に、集客施策として学生優待の期間を設けているテーマパークがあります。
これは「キャンペーンを作った」といえば作ったとなりますが、実際には「思い出作りをしたいという学生のジョブを発見した」ということ。しかしその発見が、企業としては「自分たちが作ったのだ」というぐらいの勘違いをしないと、パワフルな施策へ落ちないのだと思います。
荻野:ジョブを見つけ、そして形にするために「作った」へ言い換えていると。ああ、納得できました! では、そのジョブを見つけるためにどんな方法があるのでしょうか。
津田:INDEE Japanでは、ジョブ理論をより使いやすくフレームワーク化したJOBSメソッドと呼んでいるものを用います。しかしジョブを発見することの難しさは、見つかっても気づかないことにあります。つまり、“探し物”は何であるか、を分かっていないとダメなのです。
津田:どんな探し物もそうだと思うのですが、見つけたいもののイメージを持つことが大切だと思っています。ジョブを見つけるプロセスにおいて「いま見逃しているものの中に、大きなビジネスへつながるジョブがあるはずだ」という仮説は必要ですし、ジョブとは何かという視点やフレームワークを持つほうが見つけやすくなりますね。