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組織変革のための方法論「Positive Deviance」

組織変革を促す方法論「Positive Deviance」を「ジョブ発見」と「リサーチ」で活用するには

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 前々回は、Positive Deviance (以下、PD)の哲学を、Positive Devianceの第一人者であり実践者であるアービンド・シンハル氏の講演内容からお伝えした。前回は、方法論としてのPDを「4つのステップ」で解説した。今回は、どんな手法でも向き不向きがあることを考慮して、PDを事業活動に適用するための方向性を考えるために、イノベーションやマーケティングの文脈におけるPDを紹介する。

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「ギャップアプローチ」から「ポジティブアプローチ」へ──関係性を変えることで組織にインパクトをあたえるPD

 組織開発に関わる方は、PDを「ポジティブアプローチ*1」の1つと思われるかもしれない。確かにPDは「AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)*2」のような方法論との共通点がある。それは人や組織のポジティブな面に焦点を当てるという考え方だ。そして、こうしたポジティブな面に焦点を当てる考え方の必要性は高まってきていると感じる。

 ポジティブな面に焦点を当てるということは、従来の予算と計画を重視するアプローチとは異なり、その組織・コミュニティにある資産とそこにいる人を重視することだと言える。

 「予算と計画の世界」では目標が掲げられ、目標を達成するために予算と計画に合わせて、その過程で発生する問題を潰しながら進めていく。この世界での問題は固定的なものであり、目標とのギャップで示される。そして、ギャップを埋めるということが問題解決になる。

 こうしたギャップアプローチは理想の姿を描き、それに突き進んで行く場合には有効だが、描いた理想が絵に描いた餅になり実現できないという懸念をはらんでいる。

 一方でPDは非常に実践的な手法だ。解決策を考案するときに業界のベストプラクティスみたいなものから発想せずに、“既にそこにある正解”を探す。だから、そこで見つかったPD行動は、その組織やコミュニティに展開可能なものになる。ただし、そのためには、組織やコミュニティにおける人々の関係性を変えていかなければならない。

 PDの紹介をすると、「ソーシャル・イノベーションに活用できそうな考え方ですね」と言われることが多い。これは、PDの特徴である「コミュニティ内の関係性を変えることで新しいやり方を普及させる」という部分を拾ってのことと理解している。

 「個人の能力に着目するのが人材開発」で、「組織の関係性にアプローチするのが組織開発」と捉えると、PDとは組織開発の一つの手法と言える。それも、ギャップアプローチではなくポジティブアプローチというところがポイントだ。

 関係性を変えることで組織やコミュニティにインパクトを与えるのがPDのアプローチである。組織開発に関わる方には是非この文脈でPDを活用していただきたい。

*1.ポジティブアプローチ:ポジティブ心理学のマーティン・セリグマン氏などによる、肯定的な思考がモチベーションとエネルギーを高め、より良い結果を生み出すといった考え方
*2. AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー):問いや探求(インクワイアリー)により、個人の価値や強み、組織全体の真価を発見し認め(アプリシエイティブ)、それらの価値の可能性を最大限に活かした、最も効果的で能力を高く発揮する仕組みを生み出すプロセス
*1,2共に、ヒューマンバリュー社の用語集を参照

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この記事の著者

山田 竜也(ヤマダ タツヤ)

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