「中核となる機能的ジョブ」を分解するジョブマップとは何か?
2つ目のステージ「理解する」は、イノベーションプロセスの中でも最も重要なステージです(図1)。なぜならば、ここで収集される顧客ニーズは、将来にわたる持続可能かつ拡張可能なイノベーション活動において欠かすことができない皆さんの知的資産(競合他社が知ることのない)となるからです。このステージは、中核となる機能的ジョブの分解、顧客ニーズの収集、ニーズの優先付けという3つの主要なステップから構成されます。
今回は、この「理解する」ステップにおける「中核となる機能的ジョブの分解(ジョブマッピング)」を中心にお話ししていきましょう。
前回解説した、1つ目のステージ「定義する」において、中核となる機能的ジョブを定義したら、次はそのジョブに対する「ジョブマップ」を生成していきます。ジョブマップとは、中核となる機能的ジョブをステップバイステップに分解したビジュアルな描写です。ジョブマップ生成の目的は大きく3つあります(図2)。
■ビジョンと戦略を策定する – 生成されたジョブマップは、ソリューション(プロダクト/サービス)のビジョンと長期的な戦略策定のベースとなります。ソリューション構築に対するロードマップを通じ、理想的または究極的には単一のプラットフォームでジョブ全体を成し遂げることに役立つソリューションを構築することがゴールです。
■ニーズ収集をガイドする – 戦術的な側面からは、ジョブマップは対象市場における全ての顧客ニーズを収集するためのガイドとして使います。したがって、ジョブマップは顧客ニーズを収集する準備段階として生成されます。
■成長機会を発見する – 競合分析やイノベーションのアイディアは、ジョブマップを分析することから洞察が得られます。なぜならば、それは既存のジョブ履行方法(競合プロダクト/サービスを含む)に関する欠点や不備を指摘してくれるからです。
ジョブマップは、大きく「普遍的なジョブマップ」と「消費チェーン上のジョブマップ」に分かれます。普遍的なジョブマップとは、特定のプロダクト/サービス(特にテクノロジー)とは一切関係なく、顧客が成し遂げようとしている中核となる機能的ジョブをステップバイステップのプロセスに分解したものです。上手く描写された普遍的なジョブは、過去においても、未来においてもほとんど変わることはありません。これが「普遍的」といわれる所以です。
一方、消費チェーン上のジョブマップとは、特定のプロダクト/サービスを雇おうと顧客が決めた次の瞬間から、顧客がそのプロダクト/サービスからの価値を最大限に引き出すために顧客がしなければならないステップバイステップのプロセスです。消費チェーン上のジョブはさらに、「プロダクトライフサイクル上のジョブマップ」と「サービス獲得上のジョブマップ」に分類されます(図3)。
最初に、普遍的なジョブマップについて取り上げていきましょう。