なぜ「価値発見のプロセス」が必要なのか?
世の中にない製品やサービスに需要があるかどうかは不確実です。斬新なアイデアであればあるほど、社内で支援されにくくなります。また、有名なデザイナーやプロデューサーに商品企画を頼んだからといって、プロジェクトが成功するとは限りません。有名なデザイナーが打ち出すコンセプトが新しいがゆえに、社内のコンセンサスを得られないこともよくあります。つまり、アイデアが新しければ新しいほど、周りの理解を得るのが難しくなります。なぜなら、こうしたユーザーの主観を説明するのが難しいからです。使う言葉も前提知識も異なる人たちが1つの企画に合意するのは至難の業です。考え方のステップや切り口をもう少し噛み砕いていくしかありません。
まずは、「片付けたい用事」に着目しよう
JOBSメソッドとは、顧客の主観的なニーズを発見し、説明可能にする一連のプロセスです。クリステンセンは、まず一歩目として、「片付けたい用事 (Jobs to be done)」に着目することで本当のニーズは見えてくると言います。「顧客はドリルではなく、穴を探している」という言葉は端的にこれを示しています。つまり、顧客が製品を買う背景には本来やりたいことがあるはずだということです。「壁に穴を開ける」というやるべきことや、やりたいこと、すなわちジョブを見つけることがニーズを捉えるための入り口になります。ジョブには3つの種類があります。
- 機能的ジョブ
文字通りユーザーがやりたいこと、したいこと。クルマを移動に使うのは機能的なジョブと言えます。 - 感情的ジョブ
ユーザーが特別な感情を持ちたいこと。クルマを飛ばしてストレス解消するのは感情的ジョブと言えます。 - 社会的ジョブ
ユーザーが周りからどう思われたいか。クルマをステータスシンボルとして、地位やイメージを中心に選ぶのは社会的ジョブを満足させるためです。
JOBSメソッドでは、洗濯機という製品を分析する際に、「衣類の汚れを取る」「衣類を良い香りにする」といった機能的ジョブだけでなく、「衣類の清潔感を高める」「気持ちよく洋服が着られるようにする」というような感情的ジョブ、「清潔感のある人に見られたい」という社会的ジョブからスタートします。