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ソニー元CEO平井氏と野中郁次郎氏が語るソニー再生の裏側──不安定な経営と人格者としてのリーダーとは

「第4回JINイノベーション・マネジメントシステム サミット」レポート

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 今から10年以上前、ソニーは深刻な経営危機に直面していた。製品の価格や商品力では海外の競合に脅かされ、株価は低迷。世間では連日ネガティブな報道がされ、社員たちも不安や怒り、モチベーションの低下に悩まされていたという。そんな時、2012年に新たにソニーのCEOに就任したのが、現在はソニーグループ株式会社 シニアアドバイザーを務める平井一夫氏だ。同氏は、窮地にあったソニーの経営変革に挑戦し、見事に大復活を成し遂げた。今やソニーは、日本国内でも有数のイノベーション先進企業として知られている。  10月28日に開催された「第4回JINイノベーション・マネジメントシステム サミット」では、Japan Innovation Networkの代表理事を務める紺野登氏が、平井氏にソニー復活の礎となった数々の変革の裏側について話を伺った。また、セッションの後半では一橋大学 名誉教授の野中郁次郎氏も登壇し、自身が提唱する経営論と平井氏の中にある経営哲学を紐解き、イノベーションを牽引する経営トップの在り方について考察した。

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ソニーの復活は「場づくり」から始まった

紺野登氏(以下、敬称略):平井さんは、2012年~2018年にソニーグループ(以下、ソニー)の代表取締役社長 兼 CEOを務め、2002年以降ずっと経営危機に陥っていた同社の復活を見事に実現しました。現在、ソニーは日本有数の“イノベーションに成功した大企業”として知られています。ご自身の著書『ソニー再生』(日本経済新聞出版)で、その復活の裏には2014年にスタートした、社内での事業創出を支援するプログラム「Seed Acceleration Program(シード・アクセラレーション・プログラム/以下、SAP)」の存在があると語っていますよね。

 私は、1990年代よりソニーの研究を長年行ってきたのち、2012年からJapan Innovation Network(JIN)として社外からSAPの構築に携わりました。本日は、平井さんと当時を振り返りながらSAPの誕生秘話、イノベーションの成功要因についてお話しできればと思います。

紺野登氏[Japan Innovation Network 代表理事]
紺野登氏
[一般社団法人Japan Innovation Network 代表理事/多摩大学大学院 経営情報学研究科 教授]

平井一夫氏(以下、敬称略):よろしくお願いいたします。

紺野:現在、多くの企業が新規事業開発などに頭を悩ませていますが、ソニーは2018年にSAPを「Sony Startup Acceleration Program(ソニー・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム/以下、SSAP)」と改め、新規事業創出のノウハウや知見を社外に提供するまでに進化を遂げました。これは、今まさに日本企業が目指すべき、「労働集約型から知的集約型への転換/創造的で人間中心の経営」を実現した成功事例だといえるでしょう。

 平井さんは、ソニーが経営危機に直面していた最中にCEOとなり、従来の経営の在り方を改革。イノベーションの土壌を整えました。当時の取り組みや成功要因について、以下5つのテーマでお話をお伺いします。

  • 場づくり
  • SAP
  • 知の生態系
  • リーダーシップ
  • 組織の利権やしがらみ

 まずは「場づくり」について。SAPはソニーのイノベーションを実現した偉大なプログラムですが、それ以前に“社員がイノベーションを起こせるような場づくり”を行わなければ、このプログラムは生まれなかったのではないかと考えています。なぜ、平井さんは最初に社内の場づくりに目を向けたのでしょうか。

平井:皆さんもご存じのとおり、ソニーは2002年~2013年にかけて深刻な株価の低迷に直面しました。メディアのニュースでも連日ネガティブな報道がなされ、世間からは「最近ソニーらしい良い製品がずっと出てきませんよね」と言われてしまう始末。そんな環境下で仕事をしている社員たちも、不安や怒り、モチベーションの低下などに苦しんでいました。

 そこで、まずは負のスパイラルに陥っている組織全体のマインドセットを変えようと考えたのです。「困難な時こそ、クリエイティブでなければならない」「リスクを背負ってでも、新しいことにどんどん挑戦してこの状況を打開しよう」というマインドが全社に伝わって、初めてイノベーションを起こすための具体的な取り組みに臨めるのではないでしょうか。

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この記事の著者

名須川 楓太(Biz/Zine編集部)(ナスカワ フウタ)

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