0-1を生み出すための「デザイン」とは?
私が2017年まで在籍していたハーバード大学デザイン大学院には、様々な企業や政府機関からリアルなテーマが提出されます。その中のひとつに「50年後のNASAの働き方を設計してください」というものがありました。学生たちはそのテーマに対して自ら課題を設定し、あるべき未来を描いて、それを具体的な設計に落とし込みます。日本の大学の建築学科であれば、予め決まった敷地に対して教授の示す課題にそった建築物をデザインするのが一般的で、根本的なアプローチが異なります。
この課題に対して私が最初にやったのは、過去から現在までのNASAの国家予算の遷移を分析することでした。すると、スペースシャトル終了以降、宇宙開発予算はどんどん削減されていることがわかりました。宇宙の研究よりも、砂漠化、地震、異常気象等、地球上に山積する問題のほうがずっと重要に思われたからでしょう。