店舗のメディア化やデータ活用、戦略的提携。小売業界にイノベーションを起こす薬王堂の取り組みとは?

Biz/Zine Day 2018 Autumn セミナーレポート Vol.2

 ネット通販が普及し、人々の購買行動が変化するなかで、小売業界は変革を求められている。人手不足に悩む小売業種も多いが、大躍進しているのが東北を地盤にするドラッグストアチェーン、薬王堂だ。全店で41ヶ月継続して売り上げが前年を上回り、店舗数も増加中である。薬王堂は駐車場も店内通路も広々とした、来店しやすく回遊性がいい店舗を、商圏人口7,000人といった小商圏で展開している。商品の「顔」を見せて顧客が買いたい商品を自由に買ってもらえるようにするなど、ローコストオペレーションを重視している。半年から1年間、毎日同じ低価格で販売する「激得」といった施策が支持を得ている。
 2018年10月30日に行われたBiz/Zine Day 2018 Autumn「デジタル時代の破壊的イノベーション、その傾向と対策」には薬王堂経営企画部長の西郷孝一氏が登壇。多数の企業と協力して行なっている取り組みと今後の展望を語った。その内容を紹介する。

[公開日]

[講演者] 西郷 孝一 [取材・構成] フェリックス清香 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発

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2020年2月までに「キャッシュレス50%」を目指す

 先日、薬王堂仙台泉館店で無人化レジの実証実験を2019年中に行うという発表があった。薬王堂に商品を卸している化粧品・日用品卸大手のPaltacと米スタンダード・コグニションが共同して行う実験の場として選ばれた形だ。多くの無人決済の取り組みは、小さな店舗で来店数の上限を決め、専用のカメラや照明を多数使って行う技術が多い。しかし、スタンダード・コグニションの技術を使えば薬王堂のような300坪程度の広い店舗でも無人決済システムが可能だという。

 薬王堂のIT化の取り組みはこれにとどまらない。1年半前にポイントカードを変更した際、自社のプリペイド式電子マネーを使えるようにした。その結果、1年半で売り上げの3割が電子マネーでの支払いになった。日本のキャッシュレス決済比率が2割だという現状を考えると、高い水準である。

 この背景には、様々な仕掛けがある。その一つが60歳以上の顧客が持つことができる「おでかけカード」というポイントカードである。薬王堂は、来店をきっかけに、少しでも歩いて健康になってもらえればという発想から、「おでかけカード」を持っている顧客は1日1回来店して買い物をすると3ptがもらえるようにしている。300ptは500円分の支払いに使える。それに加え、プリペイドカードにチャージをするとポイントがたまったり、プリペイドカードを使うとポイントがたまったりと、顧客が利便性を感じられるようにしているのだ。

 また薬王堂は現在、Origamiというスマホアプリを使った決済システムの導入も検討している。Origamiは会員登録料やカード手数料が一切かからず、無料で使えてスマホだけで決済が完了するので、顧客にとっても利便性が高い。

 キャッシュレスにこだわるのは、薬王堂の店舗の仕事の中で、レジ作業が大きな割合をしめているからだ。キャッシュレス化すればレジの仕事の負担が軽減する。また、顧客の利便性も上がる。西郷氏は、2020年2月までにキャッシュレス決済50%を目指していると語っている。

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