企業が何者であるかを知るために、誰を幸せにしたいのかを知る。新潟の企業FARM8に学ぶ“愛おしむ力”とは
栗岡大介さん(以下、敬称略):前編で日本企業には「Who are We」という定義が大切だというお話をしていただきました。それを考えるときには、「誰を幸せにしたいのか」ということが大切なんじゃないかと思いました。
この間、「FARM8」という新潟の企業を訪問した際、社長の言葉にハッとしたことがあったんです。
「私たちはライトワークをしているんだ」と。
自分の生活を成り立たせるための「ライスワーク」でもなく、自分の人生を輝かせるための「ライフワーク」でもなく、社会に光を当てるための「ライトワーク」なんだそうです。
クリスティーナ・アメージャンさん(以下、敬称略):へえ、面白いですね。
栗岡:新潟には、何百年も続く酒蔵を守る人もいるし、美味しいお米を作り続ける人もいる。FARM8のビジネスの原点は、純粋に地元で頑張る人々を支えたいという気持ちでした。
彼らが手がけている商品で「ぽんしゅグリア」というものがあります。これはワインのサングリアから着想を得て生まれた日本酒カクテルの素で、おしゃれなワンカップにドライフルーツやはっか糖が入っていて、そこに日本酒を注ぐだけでカクテルになります。日本酒は自分の好きなものを選べます。ちなみにこのドライフルーツは、美味しいんだけど規格外品で流通に乗らなかった果物で、これまでは捨ててしまうものだったそうです。
実際に店頭に行ってみると、新潟の日本酒を販売している棚の横に、ぽんしゅグリアが売られています。普段、日本酒を飲まない方もパッケージのかわいさから「ぽんしゅグリア」を購入すると、必然的に日本酒を消費することに繋がります。つまり、ぽんしゅグリアは日本酒が消費される「プラットフォーム」を提供し、新潟の日本酒業界に新しい価値を生みました。まさに、ライトワーク!業界に光を照らしていますよね。
先ほどのアメージャン先生の話に戻りますが、「Who are We」は、「誰を幸せにしたいんですか?」という問いかけと似ている気がしています。それは、「愛おしむ力」ということでもあるかなと思って。
アメージャン:そうですね。会社だけじゃなくて、人間でも同じことですよね。
「Who am I」を見つめ直すことが大切です。「I am a Salaryman who works at A company」とか、「I am a professor at B University」とかだけじゃないはずです。毎日定義し直さなくてはいけない。Who am I today? Who am I tomorrow? って。
それに人間は一人じゃ生きていけないでしょう。私たちは他の人とのリレーションシップで、人間になります。関係性ですから、そこには必ず、Who are you? という問いかけも同時に出てくるわけです。