ダイバーシティ経営とは日本人が元来持つ個人の多様性の復活──「誰を幸せにしたいか」という企業の目的

ゲスト:一橋大学大学院経営管理研究科教授 クリスティーナ・アメージャン氏【後編】

 今回お迎えしたのは、一橋大学大学院経営管理研究科教授のクリスティーナ・アメージャン氏。大学で教鞭を取る傍ら、日本取引所グループ、三菱重工業、住友電気工業など大企業の社外取締役も務め、コーポレート・ガバナンスの現場に精通しています。アメージャン、先生は専門である組織社会学の観点から「スケール・ディーパー」の存在をどう捉えているのでしょうか。前編では、日本の大企業において社外取締役として活躍するアメージャン氏が感じた日本企業の課題をお伺いしました。
 後編は、前編でアメージャン氏に語っていただいた日本人が大切にすべき「私達は何者なのか?」という問いと栗岡氏がスケール・ディーパーの特徴としてあげる「愛おしむ力」の共通点や、「ダイバーシティとは組織内での多様性だけではなく、個人の中での多様性のことでもある」と、アメージャン先生が語った対話の内容を中心にお伝えします。

[公開日]

[語り手] クリスティーナ・アメージャン 栗岡 大介 [写] 長谷川 梓 [取材・構成] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ダイバーシティ 事業開発 企業戦略 スケール・ディープ

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企業が何者であるかを知るために、誰を幸せにしたいのかを知る。新潟の企業FARM8に学ぶ“愛おしむ力”とは

栗岡大介さん(以下、敬称略):前編で日本企業には「Who are We」という定義が大切だというお話をしていただきました。それを考えるときには、「誰を幸せにしたいのか」ということが大切なんじゃないかと思いました。

この間、「FARM8」という新潟の企業を訪問した際、社長の言葉にハッとしたことがあったんです。

「私たちはライトワークをしているんだ」と。

自分の生活を成り立たせるための「ライスワーク」でもなく、自分の人生を輝かせるための「ライフワーク」でもなく、社会に光を当てるための「ライトワーク」なんだそうです。

クリスティーナ・アメージャンさん(以下、敬称略):へえ、面白いですね。

栗岡:新潟には、何百年も続く酒蔵を守る人もいるし、美味しいお米を作り続ける人もいる。FARM8のビジネスの原点は、純粋に地元で頑張る人々を支えたいという気持ちでした。

彼らが手がけている商品で「ぽんしゅグリア」というものがあります。これはワインのサングリアから着想を得て生まれた日本酒カクテルの素で、おしゃれなワンカップにドライフルーツやはっか糖が入っていて、そこに日本酒を注ぐだけでカクテルになります。日本酒は自分の好きなものを選べます。ちなみにこのドライフルーツは、美味しいんだけど規格外品で流通に乗らなかった果物で、これまでは捨ててしまうものだったそうです。

ぽんしゅグリアFARM8の「ぽんしゅグリア

実際に店頭に行ってみると、新潟の日本酒を販売している棚の横に、ぽんしゅグリアが売られています。普段、日本酒を飲まない方もパッケージのかわいさから「ぽんしゅグリア」を購入すると、必然的に日本酒を消費することに繋がります。つまり、ぽんしゅグリアは日本酒が消費される「プラットフォーム」を提供し、新潟の日本酒業界に新しい価値を生みました。まさに、ライトワーク!業界に光を照らしていますよね。

先ほどのアメージャン先生の話に戻りますが、「Who are We」は、「誰を幸せにしたいんですか?」という問いかけと似ている気がしています。それは、「愛おしむ力」ということでもあるかなと思って。

アメージャン:そうですね。会社だけじゃなくて、人間でも同じことですよね。

「Who am I」を見つめ直すことが大切です。「I am a Salaryman who works at A company」とか、「I am a professor at B University」とかだけじゃないはずです。毎日定義し直さなくてはいけない。Who am I today? Who am I tomorrow? って。

それに人間は一人じゃ生きていけないでしょう。私たちは他の人とのリレーションシップで、人間になります。関係性ですから、そこには必ず、Who are you? という問いかけも同時に出てくるわけです。

クリスティーナ・アメージャンクリスティーナ・アメージャンさん(一橋大学大学院経営管理研究科教授)
1959年スウェーデン生まれ(国籍は米国)。81年ハーバード大学卒業、87年スタンフォード大学ビジネススクール経営学修士課程修了、95年カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス博士課程修了。95年コロンビア大学ビジネススクール助教授を経て、2001年一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授、2004年同教授、2010年同研究科長、2012年より現職。ベイン・アンド・カンパニーと三菱電機において民間企業の勤務経験を持つ。 現在、三菱重工業株式会社、株式会社日本取引所グループ、住友電気工業株式会社の社外取締役を務める傍ら、数多くの日本企業や多国籍企業に対する研修やコンサルティングも行う。専門研究テーマは、コーポレート・ガバナンスや、東アジアおよび欧州、米国の資本主義の比較制度、日本企業の様相変化など。日本在住20年。母国語である英語と同様、日本語、中国語を話す。

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