及川さんに聞く、OKRの実践的な運用方法──OKRにおける期間設定・レビュー・評価・報酬の考え方

第4回 特別対談 ゲスト:及川卓也さん【後編】

 これまでの連載では、OKRについて教科書的に整理してきました。そこで紹介した基本を踏まえ、堀江真弘さんがOKRを実践してきた方たちに話を聞いていきます。今回は複数の外資系企業でのエンジニアリングマネージャ経験があり、現在は日本のスタートアップ企業へのアドバイザーとして活躍する及川卓也さんに、日本企業がOKRを実践するときに必要なことについて伺いました。
 前編では、組織のカルチャーとOKRについて説明していただきました。後編では、実践的なOKRの運用についてさらに踏み込んで伺っていきます。

[公開日]

[語り手] 及川 卓也 [聞] 堀江 真弘 [取材・構成] 遠藤 由次郎 [写] 和久田 知博 [編] 梶川 元貴(Biz/Zine編集部)

[タグ] ビジネススキル 事業開発 組織開発 OKR 目標管理

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事業内容や規模で異なるOKRの期間──常識的な範囲で収めないObjective設定とは?

堀江:一般に、OKRは3ヶ月ごとに見直すものと言われています。一方、上場企業にはIRで発信している中長期の計画があります。日本の大手企業がOKRを考えるとき、OKRを中長期計画と紐づけて設定してもいいのでしょうか。

及川:中長期の期間や精度によりますよね。それが指す期間・精度は、事業や企業、業界によって異なります。あまりにも長い期間を指した場合、絵に描いた餅で終わってしまう可能性があるので、OKRに紐づけることには懐疑的です。どのくらいを中長期と想定されているのでしょうか。

堀江:今回は2~3年の期間を想定していました。実際、YouTubeのように2~3年スパンのOKRを設定していたという例もあります。OKRと長期計画をイコールとした設定も可能なのでしょうか。

及川:もちろんそのように設定しても構いません。YouTubeでは2~3年先まで見通すことができ、そこまでのマイルストーンを設定したかったという事情を踏まえてOKRを設定していました。

 OKRは最短だと3ヶ月ごとに設定しますが、もちろん3ヶ月では終わらないプロジェクトもありますよね。そうすると、3ヶ月スパンのOKRだけを設定するのは難しいのです。3ヶ月のOKRを設定するために、その上位のOKRをどのくらいの期間で考える必要があるのかを意識した方がいいですね。たとえば、スタートアップが3年後まで見通したOKRを設定するのは難しいですよね。

 事業内容や会社規模によって、どれくらい先まで見通した上で直近の3ヶ月を考えるのかが決まります。その「どのくらい先」が中長期計画にあてはまると考えていいと思います。

堀江:ありがとうございます。すでにOKRを導入している企業の中にも、OKRの期間について頭を悩ませているところがあります。例えば3カ月でOKRを設定しても、見直すたびに戦略が変更されているように見え、メンバーが疲れてしまうといったものです。この場合はどのようにOKRを組み立てていけばいいのでしょうか。

及川:Oがころころと変わってしまう場合、Oの設定を間違えている可能性があります。明確な目標がまだ定まっていない企業ほどOの設定は難しいですよね。

堀江:状況が変わりやすいスタートアップや新規事業だと、時に頻繁なピボットも必要になるが故ですね。

及川:はい。ただ、その場合のOは「やりたいことを決める」とすべきなのです。

堀江:Objectiveを「やりたいことを決める」にしてもいいんですか?

及川:そうです。そうすると、短期的に路線変更を繰り返すことも受け入れられますよね。

堀江:なるほど。ビジネスが成立する市場と方法を探す、というものに近いですね。

及川:他にも、立ち上がりたてのスタートアップが「半年後に潰れない」というOの設定をすることができます。この場合でも「潰れない」ためにすることはOKRの考えとしては正しいのです。Oを頻繁に変更してしまうという悩みの裏には、Oを常識的な範囲で収めてしまっているかもしれません

堀江:この発想は面白いですね。OKRでは今世の中に無いような、野心的な価値の創出を促すものにしたほうがよいと考えていたので、このお話で少し楽になる人もいるかもしれません。

及川 卓也さん及川 卓也さん
東京出身。早稲田大学理工学部卒。専門だった探査工学に必要だったことからコンピューターサイエンスを学ぶ。卒業後は外資系コンピューター企業にて、研究開発業務に従事。現在で言うグループウェア製品の開発や日本語入力アーキテクチャ整備などを行う。その後、数回の転職を経験。OSの開発、ネットワークやセキュリティ技術の標準化などにも携わる。プロダクトマネジメントとエンジニアリングマネジメントという製品開発において軸となる2つの役職を経験。 2019年1月、テクノロジーにより企業や社会の変革を支援するTably株式会社を設立。

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